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2023-10-23 10:08
CIAとモサドはハマスの襲撃を何故許したのか?
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
イスラエルという国はユダヤ人の国家で、それまで「定住国土のない民族」といわれたユダヤ人に、第一次世界大戦の都合でイギリスがユダヤ人に国家を与えると約束したことから、ユダヤ人国家イスラエルが建国されることになる。実は世界三大「国土のない民族」として「アルメニア人」「客家」と「ユダヤ人」といわれていたのであるが、そのユダヤ人が国家を持ったということになるのである。当然に、そのような国家が突然に領土を盛ったとなれば、周辺の国からは警戒される。それも、異教徒の集団であるとなればなおさらであろう。そのうえ、「ユダヤ教」「キリスト教」「イスラム教」はすべて「聖地」が同じである。これは同じヘブライの民といわれる神話上の存在(といえば怒られるかもしれませんが)の宗教の系列であり、同じ神からの「神の啓示者」が時代によって異なるということになっただけの話なのである。それにしても、この神は、時代によってかなりいうことが異なっているようで、なぜか同じ神からの啓示者でありながら、全く異なる神であるかのような発言はするし、また、その神がお互いに争うような結果になるようなことを伝えているのである。その辺の疑問は別にして、そのようなことから、当然にその建国にかかわった国々、つまりアメリカとイスラエルの情報機関は非常に強いものになるということになるのであろう。
ある意味で「世界最強」といわれた情報部がアメリカCIAとイスラエルのモサドであり、その対抗馬が旧ソ連のKGBということに、少なくとも日本の陰謀論者の間ではそのようになっているようだ。私からすれば、そのようなことはなく、他にも優秀な情報部はたくさんあるのであるが、日本の場合は映画の影響があまりにも多く、そのうえアメリカの価値観がどっぷりと入っているので、そのような感じになってしまう。もちろん優秀ではないといっているのではなく、分野やその内容に関して、全く異なるということになる。少なくとも日本よりはうえであるという事だけは確かであろう。まあ、それでも一応かなりよい情報部であるこの二つの組織が、今回のハマスのイスラエル襲撃を全く予期できず、そのうえ音楽フェスを襲撃されて、多くの人質を取られるということになった。これは何が悪かったのであろうか。
情報の中には「ヒューミント」「シギント」「オシント」という三つの分野がある。ヒューミントは「口コミ情報」である。この情報が最もディープであるが残念ながら立証性が少なく、なおかつガセねたも多い。そのことからヒューミントはその真偽性の判定がかなり難しいとされており、かなりのベテランでなければできない。しかし、ヒューミントが最も先にすべての情報を得ることのできる状態であるということも確かなのである。シギントは、盗聴やハッキングなどのハイテクである。そしてオシントは、すでに発表さている情報の分析ということになる。さて、最近アメリカもモサドもヒューミント部門を少なくし、シギントを重視するようなった。もともとモサドはイスラム教の国に深く入り込んで、イスラム教徒や政治のトップとの会話からヒューミント情報をとっていた。私もインドネシアなどでその現場に何回も立ち会っている。まさにそのヒューミント情報がしっかりと行われているのが、本来の内容であったはずだが、モサドも、いつの間にかシギント中心になってしまった。シギントの弱点は「誰かが機械を使わなければ情報が入らない」ということであり、なおかつ、文章などをハッキングする場合は「その文章が加工されたものである場合は、その文章を作っている時間だけ情報が遅れる」ということである。ましてやそれがダミーなどで作られている場合は、ヒューミントがなければ太刀打ちができない。
今回はまさにそのものである。実際にここには書いていないがモサドはイランのある場所でヒズボラやハマスが会合をしていたことを知っていた。しかし、このヒューミントの情報は「ロシアのウクライナ侵攻の支援」と勝手に決めつけてしまい、そのまま情報を保留してしまったのである。ヒューミント情報の最も大きな問題は、その情報入手者がそれなりの感度がなければ、情報が目の前にあっても拾うことができないという事であろう。そのうえ、シギントで情報が入らなければ「兆候があっても見逃す」ということになってしまう。このヒューミント情報に関しては、「そのような情報を入手していたようであるが全くモサドもCIAも反応しなかったようだ」ということが報告されている。シギント重視でヒューミントにベテランを配さなかったということが大きなミスの第一歩であろう。報道では、イスラエルの退役軍情報将校は取材に対し、「人と付き合って情報を取った昔と比べ、現在は人から情報を得ることが少なくなっている」と明かした、とのことである。情報は「情」である。まさにアナログの世界なのである。そのことをわかっていないと、情報の世界ではやってゆくことはできず、今回のような大きな事故につながるのではないか。
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