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2023-02-13 08:49
インド太平洋安保強化に連携急ピッチ
鍋嶋 敬三
評論家
日本が米国、オーストラリアと足並みを揃えてインド太平洋地域の安全保障強化のためフィリピン、インドも巻き込んだ連携のさらなる推進に踏み出した。背景には「戦後最も厳しく複雑な安保環境」に直面して「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を守るため、同盟国・同志国間の防衛・安全保障の協力強化に迫られたことがある。中国による台湾武力侵攻の懸念、ロシアと中国の軍事連携の推進、北朝鮮の核・ミサイル開発の急速な進展が目前にある。
FOIPにとって重要な出来事は2022年6月のフィリピンの政権交代である。ドゥテルテ前大統領は中国傾斜で米比同盟関係をないがしろにした。マルコス新大統領は訪中で対中関係を維持しつつも対米関係の改善にかじを切った。バイデン米政権の動きも早かった。2023年早々に「米比戦略対話」(1月20日)で同盟関係を支えるための「防衛安保対話」の創設、6年間も開いていない外務・防衛閣僚対話(2+2)の早期開催、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結交渉を優先課題に取り上げた。その2週間後の国防長官会談(2月2日)では米軍の「巡回駐留」の拠点を4カ所から9カ所に増やすことに合意した。南シナ海の米比共同巡回活動も実施する。台湾有事に備えた中国けん制の動きでもある。
米国はオーストラリアとの同盟関係も強化した。22年12月6日の「2+2」で爆撃機、戦闘機、陸海軍を含めた「巡回駐留」を増やす防衛協力の強化に合意した。さらに23年2月3日の米豪国防長官会談ではFOIPという共通ビジョンを追求する中で「日本と緊密に協力する新たな道を見出す」(オースチン米国防長官)とした。同長官はAUKUS(豪英米)協力にも触れており、太平洋から大西洋にまたがる同盟国協力のネットワークに日本を含めて考えていることを示した。日本は豪州との第10回「2+2」(22年12月9日)で同年10月の日豪首脳会談による「安保協力日豪共同宣言」に基づく防衛協力の推進に合意した。日豪は「準同盟関係」になったのである。その中で日米豪3カ国協力の具体的強化、AUKUSへの支持、日米豪印4ヶ国(Quad)の連携強化を確認した。
岸田文雄首相はフィリピンのマルコス大統領を迎えた首脳会談(23年2月9日)で自衛隊による人道支援、災害救援活動の取り決めを歓迎し、自衛隊と比軍の共同訓練の強化のため「円滑化協定」を進める。フィリピンの海上保安能力強化のため大型巡視船の供与や防衛装備、技術協力さらに沿岸警備のため日米比3ヶ国の協力強化に合意、領土・領海紛争で中国の軍事的圧力にさらされるフィリピンを日米が支える構図が明確になった。
日本政府は太平洋諸島との関係強化も同時に進めた。ミクロネシア連邦(2月2日)、クック諸島(2月7日)の首脳、太平洋諸国フォーラム(PIF)代表団とも会談。安保3文書に基づく防衛力の抜本的強化について首相が直接説明し、太平洋戦争中、戦場になった国々の理解を求めた。中国などの反日宣伝工作を封じる狙いもある。日比首脳会談と同日、岸田首相はベトナムの最高指導者グエン・フー・チョン共産党書記長と電話会談、政治・安全保障分野でも協力強化で一致した。
岸田首相とストルテンベルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長の会談後の共同声明(1月31日)は日・NATO間の戦略的連携の強化を確認、アジアから大西洋世界への強いアピールとなった。日本がなすべきは防衛力の抜本的強化で侵略を許さない決意が揺るがないと世界に示すことだ。国連安全保障理事会の非常任理事国、先進7ヶ国(G7)の23年議長国として世界の安定を主導する明確なメッセージを発して国際世論を喚起し、平和への圧力を高めるためリーダーシップを発揮する時である。
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