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2022-11-17 13:57
日本の価値の低下と教育改革の方針
船田 元
衆議院議員
かつて日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と表現され、実際にもそれに近づいた時期もあったが、現在一人当たりのGDPは27位にまで転落した。有力論文の引用数で代表される科学技術力もかつての4位から12位に転落してしまった。スタートアップの企業数も少なく、地域を動かすリーダーも生まれにくくなっている。
このように我が国の世界的地位は危機的な状況になっているが、その原因の多くが硬直化した学校教育にあると言っても過言ではない。高度経済成長期には、製造業を効率的に稼働させる、勤勉で平均的な能力を持った労働者が重宝された。しかし世界は多様な価値観のもとで働き、ICTやAIの技術を駆使して、様々な隘路をブレークスルーしている。こうした世界の潮流に日本は完全に乗り遅れている。
彼らに伍して闘っていくためには、知識詰め込みの系統学習や偏差値主義を脱ぎ捨て、問題発見・解決を求める学習、物事の本質を探究する学習、個別最適な学習を積極的に導入し、個性的で自律的な人間を育成する必要がある。
ところで「深い学び」あるいは「探究学習」とは何を目指しているのだろうか。それは子どもたちが学校教育や諸活動の中で、「自分は何のために学んでいるのか」「世の中を良くするには何が必要か」「解決すべき課題は何で、どうしたら解決できるか」といった問いを自ら発し、自ら考えていくことである。今年から実施された高校学習指導要領に掲げた「主体的で対話的、深い学び(あるいは探究)」とはこのことを意味している。
これに近いもう一つの教育の系譜としては、起業家教育あるいはアントレプレナーシップ教育がある。文科省は最近、起業家教育を小学校から高校まで、発達段階に応じて、積極的に導入することを勧めている。確かに高等教育では実際の起業につながる機会が多いが、高校などでの起業家教育は、開拓精神やチャレンジ精神を旺盛にして、世の中や地域の問題をどう解決するか。あるいは自分の針路を自分で見つけたり、新しい価値を創造したりすることを目指す。前述の探究教育と非常に近い関係にある。
探究学習や起業家教育を成功させるためには、教員側の意識改革が不可欠である。教員から子どもたちに一方通行で教えた方が、効率的で楽なことは間違いない。系統学習の場合はそれでも許されるが、探究学習は子どもの活動が中心でなければならない。子どもたちが解答にたどり着くまで、我慢することが肝腎である。答えは一つとは限らず、多様な考え方を受け入れ、多様な見方をしなければならない。子どもたちとの対話が何よりも大切である。
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