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2022-04-27 23:36
理性による平和構築を
船田 元
衆議院議員
ロシアによるウクライナ軍事侵略が始まってから、2ヶ月が過ぎた。首都キーウへの攻撃は一時中断したものの、マリウポリをはじめ南東部の戦闘が激しさを増している。一方キーウ郊外で、多くの民間人が殺害された事実が明らかとなった。まだ全容解明には至らないが、「虐殺」と表現されるほどの非人道的行為がロシア軍には行われたことは間違いない。これに対してEU諸国、NATO諸国そしてアメリカはウクライナを支援する軍事的レベルを上げ、能力の高い武器供与を始めている。日本は「武器輸出三原則」のために、攻撃的武器の供与は難しいが、周辺機材の供与は前向きに対応している。自民党内部ではこの三原則の見直しを検討する動きもある。経済制裁もより一段の厳しい対応で、足並みを揃えつつある。
一方で、断続的に紛争当事国同士の停戦交渉が続いているが、お互いが原則論に終始し、膠着状態に陥っている。しかしこれ以上の民間人を含めた犠牲者を生み出さないためには、双方が大いなる妥協を目指すか、さもなくば第三国・機関による仲裁の知恵を出すことが切望される。これまで世界は感情論に支配されてきたが、これからは理性を働かせなければならない。もちろん力による現状変更を目論むロシアを、「最も強い言葉」で非難することは当然だが、侵略を招いた一因としては、ゼレンスキー政権がロシアが最も嫌がるNATO加盟に言及したことが挙げられる。流石にゼレンスキー大統領はこれを撤回しているが、これに代わる新たな安全保障の枠組みを提案している。トルコ、ポーランド、イスラエル、ドイツなどをメンバーとして、新たな枠組みを構築するというが、世界はまだ真意を掴み取れていない。
またロシアが支配地域を拡大しているドネツィク州やルハンシーク州などのドンバス地方、既にロシアが実効支配しているクリミア自治共和国の帰属問題が、停戦交渉の最大のポイントとなっている。領土問題はその国の主権行使の要であり、極めてセンシティブであるばかりか、複雑な歴史的背景がある。周りが口を挟むことは難しいが、停戦や今後の平和構築のためには避けて通れない問題である。当事者間の交渉に加えて、第三国や国際機関の関与が望まれる。
今回のウクライナ問題に対して、国連が有効に機能していないことも大きな課題だ。安保理常任理事国の一つであるロシアは、当然のこととしてロシア軍の撤退決議に拒否権を行使した。これでは東西冷戦時代に逆戻りである。拒否権を行使した国には、総会において理由を説明する義務を課した決議案が提出されるようだが、可決の可能性が大きいと言う。しかし拒否権行使の制約など、もっと抜本的な安保理改革が必要ではないだろうか。今後停戦が成立し地域の平和が構築されたあとは、1000万人を超える避難民の帰国のための作業や、インフラ・住居の復興が急務となる。このミッションを遂行するには、地続きのEUだけに任せるわけにはいかない。日本も含めた世界全体での復興支援の枠組み作りが不可欠である。その中での日本の役割は極めて大きいはずである。
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