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2007-09-17 10:43
テロ特措法ー新たな国連安保理決議による打開を
角田勝彦
団体役員・元大使
政治の世界では「一寸先は闇」と言われるが、9月12日の安倍総理退陣表明はまさにそれを裏付けるものだった。後智慧で言えば、外面は強気だが実はひよわで、とにかく未熟な名門の御曹司が同じような取り巻き連におだてられて突進し、逆境においこまれて体力とともに気力が尽き、逃げ出したということで、そう珍しくない図式である。本人としては燃え尽きた感じだろう。政治家として情けないとの印象はあるが、入院にはお気の毒との感もある。「戦後レジームからの脱却」とやらで、二階に上ったまま、梯子を外された諸氏にも同情する。
後継総裁、つまり次期総理は、タカ派の麻生幹事長(参院選大敗後に安倍継投支持)でなく、ハト派の福田元官房長官に決まりそうである。しかし、ここで政局の話をするつもりはない。辞任表明の記者会見で、安倍総理が「自分の下ではその実現が難しいから辞任する」と述べた、テロ特措法延長の問題にまた触れたいのである。本欄9月3日付けの拙稿391号で私は「日米同盟が大事だという認識では一致があるから、最後には知恵が出てくるだろう」と記したが、予想外の辞任劇で生じる空白期間から、延長法でも新法でも、このままでは11月1日の期限切れに間に合いそうもない。福田氏も「給油は対外公約」で継続が必要としながら、「民主党とどういう話し合いができるかが大事だ。…協調的にやるしかない」「少し柔軟に考えてみたい」と語っている。
給油担当の自衛艦が一時的に戻ってきたからといって、安倍首相が自分の首を代償として差し出したということもあり、各国の批判も一部が脅かしているより弱いと思われるが、自衛艦引き上げが内外のTVなどで放映されるのは好ましくない。世論調査でも、安倍辞任のインパクトから認識が深まり、給油継続への賛成が反対を上回るようになってきた。反対が賛成を上回っていると主張してきた民主党には痛手であろう。しかし、民主党の反対姿勢は変わらない。野党の第一の任務は政権交代にありとの信念で、早期総選挙実現を目指し、突っ走るようである。その態度を変更させるには、海自の給油活動は、6年前の国連安保理決議1368などに基づく国際社会への協力であるとの正論を繰り返しても効き目はなさそうである。他方、それでも政権交代を狙っている以上、民主党としても、わからずやとの批判や日米同盟への悪影響は避けたいだろう。そこで、民主党に妥協の口実を与えるような柔軟な発想が必要になる。
給油法案関係の妥協はもちろんだが、探求すべきは、国連安保理の新決議である。北部インド洋で続いている多国籍海軍による海上阻止行動(MIO)への言及さえあれば、文面は「国際社会に対し、テロ活動を防止し、鎮圧するための努力を強めるよう求める」との決議1368と同趣旨でも良かろう。今月末には、アフガンに駐留する国際治安支援部隊(ISAF)の活動を延長するための安保理決議も予定されており、一緒にしても良かろう。
筋は悪くない。そのため必要な国際的働きかけも日本(外務省)だけの仕事にすることはない。ブッシュ大統領は8日シドニーで安倍総理に補給活動の継続を自ら要請した。継続に必要なら、米国は安保理に働きかけるくらいの努力を惜しむことはなかろう。そんな決議すら通らないようなら、国益との関係で国際社会とは何かをつきつめて検討するのも悪くない時期がきたということになる
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