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2007-08-24 12:33
歴史認識問題の総括を急げ
竹内法和
大学院生
日本外交の戦略でまずやらなくてはいけないことがある。それは、早い段階での歴史認識問題の解決である。日本が行ったアジアでの侵略戦争、植民地主義、そして靖国問題、教科書問題、従軍慰安婦問題などに象徴されるように、アジア近隣諸国の反日感情はいまだに根強く残っている。また、歴史認識の曖昧な立場が、今でも中国、韓国そして日本との関係を複雑にしている。その結果、日本が外交戦略上不利に立たされているのも事実である。中国による日本の国連常任理事国入り拒否とアジア近隣諸国へのその働きかけは、1つの例としてあげられる。
昭和の戦争責任の総括として、東京裁判でA級戦犯が処刑された。裁判や判決にたいする議論は多々あるが、天皇の戦争責任回避と日本が国際社会に一刻も早く復帰する上でも、先の大戦の責任を負う形でのこの総括は不可欠であった。そんな中、戦後の日本の歴史観は負の面ばかりを強調する「自慮史観」だとする批判もある。しかし、歴史の客観的事実といっても、犠牲になった人の正確な数や、誇張された証言に対する対応、個々の歴史的価値観など、ひとつひとつを挙げればきりがない。日本国政府の統一見解としての村山談話(1995年)や小泉バンドン演説(2005年)が示すように、日本の立場は明確である。一度総括した問題に対してまた掘り起こすことは、日本の外交戦略上得策ではないと考える。むしろ、今後の相互利益にかなった政策を模索するべきである。
今日、日本を取り巻く安全保障問題は多岐にわたる。北朝鮮の核開発ならびに拉致問題、中国との東シナ海での資源争い、竹島問題や北方領土、また、地球温暖化、テロリズム、大量破壊兵器拡散、貧困、などの国境を越えたグローバルな問題など、懸念要因は様々だ。とりわけ、北朝鮮の非核化はわが国の安全保障の最重要課題である。だからこそ、アジア地域の安全については、(日米同盟はもちろん)中国、韓国、そしてASEAN諸国との連帯強化が大切なのである。その過程で、アジア地域の多国間安全保障の枠組みを作ることも重要である。
かつて国際政治学者の高坂正堯氏が日本のあるべき外交政策を「アメリカとは仲良く、中国とはけんかせず」と表現した。だが、上記に述べた問題以外にも、経済協力、東アジア共同体構想、日本の国連常任理事国入りなどの問題がある現状、中国(韓国とも)とけんかをしないだけでは十分ではない。アジアで影響力を高めようとする中国(軍事費拡大も含めて)、またそれを牽制しようとする日本、そして日中韓におけるナショナリズムなど、これらの要素が更にエスカレートすることになれば、アジアの将来は決して明るくない。
したがって、今必要なものは、歴史認識問題の早期決着である。現在行われている、日中韓での歴史共同研究から世論のコンセンサスを形成し、最終的に双方が認め合う形で和解をすることは、今後の日本の外交戦略や地域の経済発展のためにも重要である。戦争が残した「負の遺産」にたいする恨み、憎しみ、心理的障害などは、何度か首脳が会談したからといって、簡単に消えるわけでもないが、将来、日本、そしてアジア各国が、世界の平和と繁栄に貢献していくためにも、互いの信頼関係を回復することが必要なのは言うまでもない。
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