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2007-06-25 10:13
東アジア共同体形成への道:どのような順序?
トラン・ヴァン・トゥ
早稲田大学教授
共同体の内容は様々な範囲があり得る。経済に限って考えても、共同体は低次元から高次元までいろいろなレベルがある。バラッサの分類によれば、統合度合いの低い順から自由貿易地域、関税同盟、共同市場、経済同盟と完全な経済統合の諸形態がある。近年、経済統合の具体的な形態は自由貿易協定(FTA)と経済連携協定(EPA)がある。FTAとEPAも合意された内容により、バラッサの自由貿易地域とそれより高次元の形態の一部(例えば部分的労働移動、財政・金融面の協力)を組み合わせたものである。2020年くらいまでという予想し得る将来において、東アジア共同体はFTAやEPAを中心とする経済協力を展開する形態になろう。
ところで、そのような意味での東アジア共同体はどのような順序(sequence)で形成できるだろうか。まずASEAN+1で始まることは大方が一致する意見であろう。実際にそのような方向で関係各国が活発に動いているし、日中韓の間に歴史や領土の問題があるので経済緊密化の協議がなかなか進まないからだ。ASEAN+1が積み重ねられてからであれば、ASEAN+3へと進みやすいであろう。
問題はASEAN+3の次の目標は何かである。最近の議論ではインド、オーストラリアとニュージーランドを加えたASEAN+3+3(ASEAN+6)が有力である。しかし、この目標は説得力が弱いといわざるを得ない。もし上記のように共同体の当面の目標がFTAやEPAに止まるなら、東アジア諸国の貿易・投資にとって小さい存在しかないインドを含む意味は大きくない。また、オセアニアを含むなら、東アジアにとって投資・貿易とも非常に重要なアメリカまで拡大すれば有力な経済共同体になる(APECに近いもの)。もしアジアというアイデンテイテイにこだわるなら、なぜバングラデッシュやパキスタンを含まないかもよくわからない。
要するに、東アジア共同体がASEAN+3までの範囲なら納得しやすいが、ASEAN+6を主張するのであれば、有力な説明要因が必要であるように思われる。
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