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2018-11-05 14:14
危機に直面する自由貿易体制
船田 元
衆議院議員(自由民主党)
トランプ政権は中国との貿易赤字が巨額であるとして、中国からの輸入物品に関税を掛け始め、現在では取り扱い量の半数がその対象となった。中国もこれに反発して同様の報復関税を掛け、さながら「米中貿易戦争」の様相を呈している。現在のアメリカ経済は拡大基調にあるが、この影響は今後じわじわと実態経済に影響を及ぼしてくるに違いない。また日本をはじめ世界の企業は、「世界の工場」と言われてきた中国国内での製造拠点のメリット減少を見越して、他の国へのシフトを考えはじめている。世界経済の見通しがどんどん暗くなってきている。
自由貿易、自由市場の存在は比較劣位の産業の撤退と比較優位の産業への転換を後押しして、世界経済を拡大して来た。劣位の産業には厳しい試練を与えてしまうが、優位な産業に人材と資源を首尾よくシフト出来れば、世界経済は成長する。第二次世界大戦の終盤にスタートしたブレトン=ウッズ体制、GATTとその後継のWTOは、まさにこれを実現することが目的であった。
しかし世界は時々この試練に我慢できず、景気後退期には二国間取り決めやブロック化に走る誘惑に晒されて来た。もっとも顕著な例は1920年代の大恐慌の後、アメリカがスムートホーレー法などにより、ブロック経済の先頭を走って、第二次世界大戦の遠因を作ったと言われている。経済は政治や軍事をも動かしてしまうのだ。
大恐慌時のアメリカ経済と現在のそれの状況は全く違うが、トランプ政権のTPP離脱、NAFTAの再構築、対中制裁などを見ると、大戦前の風景を再現しているようで恐ろしささえ覚える。世界経済の安定のためにも、トランプ政権には目の前の貿易赤字に吠えるのではなく、その先の世界経済を静かに見据える度量を持ってもらいたいのである。
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