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2007-05-16 06:41
油断大敵の日米同盟
村上正泰
日本国際フォーラム研究主幹
安倍総理の訪米については、本欄でもすでに5月2日付で鍋島敬三氏が「『揺るぎない同盟』は重層的に」と題して論じておられるが、個人的な信頼関係の構築や「かけがえのない日米同盟」の構築において一定の成果があったことには間違いない。しかしながら、総じて見ると、あまりに無難な内容であったという印象が強い。もちろん首脳会談のたびに特筆すべき成果をあげるというようなことはあるはずもなく、その場合であっても地道なやり取りを重ねていくことが重要だったりもするわけだが、日米同盟をめぐる外交・安全保障戦略の観点からすると、もっと突っ込んだ議論が行われて然るべきであり、積極的な評価を行うにはいささか物足りない気がする。
小泉前総理の下ではブッシュ大統領との個人的な信頼関係が強調され、日米蜜月時代とも評されていたけれども、その表面的な友好関係とは裏腹に、米軍再編をめぐる日米協議では迷走を続け、今後の日米協力の具体的あり方や役割分担については多くの課題を残したままである。日本では米軍再編に関連して負担軽減ということばかりが言われ、極東戦略をもっとも効率的に遂行できるように基地や部隊を再編成するという観点に立つ米国とのあいだで認識のずれがあり、相互に不満を生む結果となっている。重要なことは、日米両国がそれぞれ具体的にどのような役割を担っていくのかという議論である。安倍総理の直面している問題は、こうした日米同盟の根幹に関わる課題に解決の道筋をつけることである。しかしながら、今回の訪米では、かかる点についてあまり突っ込んだ議論には至っていない。依然として多くの宿題を背負ったままである。もちろんこれらはすぐに解決できるような簡単な問題ではなく、それなりの時間をかけての努力が必要となるが、だからこそ早期の議論が必要なのである。
その一方で、北朝鮮問題をめぐる日米の温度差が指摘されているように、日米同盟を取り巻く情勢は複雑化している。生き物である同盟を有効に機能させていくためには、ただ単に日米同盟重視というお題目を唱えていればいいというわけではない。とりわけ政策や認識に根本的なギャップがある場合、それが原因で致命的な事態な事態になりかねず、具体的な調整は喫緊の課題である。まさに油断大敵である。
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