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2017-09-25 15:30
「日米韓」連携強化の条件
鍋嶋 敬三
評論家
国連総会を舞台にした日米韓首脳会談(9月21日)で、北朝鮮への圧力強化のため中国やロシアを含めた国際社会への働き掛けなど、連携を強めることで一致した。北へのさらなる圧力強化が必要との認識も共有、三カ国の安全保障・防衛協力を進めることも合意した。安倍晋三首相は国連総会演説で「必要なのは対話でなく、圧力だ」と訴えた。国連安全保障理事会の制裁決議とは別に、トランプ米大統領は広範な独自制裁の大統領令に署名した。米本土を射程に収める核弾頭付き大陸間弾道弾(ICBM)の実戦配備が秒読み段階に入ろうとしている以上、当然の措置である。日米韓三カ国による連携強化の条件は三つ。第一に、韓国の文在寅大統領が北朝鮮への融和政策を圧力重視に転換すること。第二に、トランプ政権が政策の一貫性を取り戻すこと。第三に、日本は米国の核抑止力を担保するための防衛力強化をスピードをもって進めることである。首脳会談の直前に韓国政府が北朝鮮に800万ドルの人道支援を行う(実施時期は未定)と発表したことは日米韓連携に水を差すものだ。北朝鮮によるかつてないほどの危機にもかかわらず、左派の文政権の対北融和政策が本質的に変わっていないことを示す。三カ国会談でトランプ大統領は新たな独自制裁で米国の決意の強さを示した。文大統領は三カ国で緊密な協力を続ける考えを伝え、安倍首相は北の核放棄に向けた戦略討議を呼び掛けた。
文発言は7月6日、G20サミット(ドイツ・ハンブルグ)での日米韓首脳会談の共同声明において、安全保障協力を推進し続けることを約束したのを踏まえたものだ。この共同声明は、北朝鮮に「最大級の圧力」をかけるための協力を約束していた。にもかかわらず、人道支援を韓国政府は決定したのである。文政権の親北姿勢は制裁の効果を損なうものでしかない。ホワイトハウスの発表によれば米韓2国間の首脳会談で両首脳は「北朝鮮への最大限の圧力と制裁が必要」で一致した。これは韓国の人道支援に「待った」をかけたと読める。日本とも安全保障の協力を進めるのであれば、反日政策を根本的に改めてもらわなければならない。
日米、米韓の両同盟の要である米国の責任はとてつもなく大きい。トランプ氏は大統領選中の「同盟見直し」論をさすがに大ぴらに口にしなくなった。しかし、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉など「米国第一主義」による世界各国とのあつれきが国際秩序の混乱につながっていることに変わりはない。外交に一貫性を欠く政権の体質は大きな問題をはらんでいる。日韓への防衛コミットメントは再確認しているものの、米韓自由貿易協定の再交渉など経済交渉の行方によっては万全でなくなる不安を抱えている。
日本の安全にとって米国の核の傘を含む拡大抑止の体制が揺るがないことが大前提である。安倍首相がトランプ大統領との信頼関係ができていることは心強い。日米首脳会談(9月21日)でもトランプ氏は「安倍首相は日本国民のためにすばらしい仕事をしている」と持ち上げた。安倍首相も三カ国会談で米国の独自制裁を「歓迎し、心から支持する」と応じ、文氏を前に「ドナルドのリーダーシップ」を連発したほどである。トランプ大統領が北大西洋条約機構(NATO)諸国に防衛費の国内総生産(GDP)比2%の達成を要求したように、米国は日韓両国に対しても防衛力の強化を求めてきた。日本としては、スピード感を持って質量ともに大幅な防衛力整備が必要である。それが北朝鮮や中国に対する圧力の大きな柱になることは言うまでもない。
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