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2017-07-28 13:59
安倍昭恵夫人の「英語力」への侮辱を座視するな
河村 洋
外交評論家
先のG20ハンブルグ首脳会議にて、安倍昭恵夫人と隣席となったドナルド・トランプ大統領は『ニューヨーク・タイムズ』紙7月19日付けのインタビュー記事で「日本のファーストレディーはハローも言えないほど英語ができない」とコメントして、物議を醸した。英米のメディアではこれを記事として流すだけでなく、反論も出回った。例えば、『ニューズウィーク』誌7月20日付け記事は「昭恵夫人はトランプ氏との会話で不用意なトラブルに巻き込まれないように用心したのではないか」と意見を載せた。実際には、誰かがどれほど英語を話せるかなどは、大した問題ではない。それよりも公衆の面前で他人、しかも一国のファーストレディーの名誉を傷つける発言をしたことの方が問題である。
歴代の合衆国大統領の中でも世界の歴史や文化に関する教養に著しく欠けるトランプ氏に対し、日本的な「惻隠の情」を理解してもらおうとは思わない。しかし、西洋的な道徳および倫理に照らし合せても、トランプ氏の発言は好ましからざるものである。もっとも、ひたすら「稼ぐが勝ち」の人生を送ってきたトランプ氏にとって、紳士的な振る舞いや大統領に相応しい品格などは、始めから考慮に値しないのかも知れない。
スロベニア出身の彼の妻、メラニア夫人が選挙応援演説で英語の訛りを嘲笑されたが、その際に、これに猛反発したのはトランプ氏の支持者たちであった。こうしたことを踏まえて考えれば、昭恵夫人の英語力についてトランプ氏が公衆の面前で恥をかかせるような発言をしたことは、この人物が自らの妻を大事に思っていないらしいことを意味するのかもしれない。
さらに憂慮すべきことは、トランプ氏は内心では安倍晋三首相のことを軽く見ているのではないかという疑念も浮かんでくる。安倍首相はトランプ氏の大統領就任前に会談に駆け付けたばかりか、就任後はゴルフにまで付き合った。このように自分を持ち上げてくれる人物にはトランプ氏の機嫌が良くなることは、選挙戦序盤でのクリス・クリスティー氏、そしてロシア疑惑追及で態度を豹変させるまでのジェフ・セッションズ司法長官の例からもうかがえる。しかし、日本がトランプ氏から軽く見られることは座視できない。日本の言論界は、昭恵夫人に対するトランプ氏のコメントの非礼さにより強く、明確に抗議すべきである。
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