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2007-04-24 18:21
日本はまず自分自身の外交の足場を固めよ
松元洋
NPO日本救援行動センター(JARC)代表
私は、過去20年余りにわたり、ソマリア、イラク、クロアチア、マケドニアでの救援に関わる仕事をしてきたが、そこには常に共通したものがあった。それは、当時のいずれの国にも日本の大使館がなく、他方、中国は大使館を維持していたということである。外務省が、費用対効果、安全性を考えて、これらの国々への外交官の派遣を控えた理由はもっともであった。特にソマリアの場合などはっきりしている。しかし、ソマリアの首都モガディッシュでの勤務時代、私は、UNHCRの職員であったが、ソマリアの外務省の幹部からよく文句を言われた。
「中国はわれわれを尊敬しているから大使館をおいている。日本は、ソマリアが東京に大使館を開いているにもかかわらず、われわれをみくびって大使館をおこうとしない」と。これに対し、私は、「日本は大使館を開く経費を節約してその分をソマリアの支援にまわしている。日本の支援額は米国、イタリアに次いで大きく、中国の額を超えていますよ」と弁明に汗をかいたが、理解をうることは難しかった。確かにソマリアにおいて、中国は御殿のような大使館を構え、支援には千人もの労働者を本国から呼び寄せて、道路、公共施設の建設工事を展開していた。
イラクの場合、中国はバグダット郊外に広大な敷地を確保し、豪勢な大使館事務所、大使/館員宿舎、そしてプールまで備えていた。マケドニアの場合には、大使館の建物に加え、独立した商務部のオフィスを設置している。実際問題として、人口200万、面積2万5千平方キロのマケドニアに、目下のところ大使館設置の必要はないのかもしれない。だが、バルカンの状況は昨年のモンテネグロの独立、今年の避けがたいと思われるコソボの事実上の独立によって大きく変わろうとしている。そのなかで中国の経済活動は日を追って活発である。中国人の数も急増し、今や、東洋人はみな中国人と間違えられる時代になりつつある。
とは言うものの、日本のマケドニアに対する支援は抜群で、ここ数年を見ても、8億円に近い国立病院への医療機材、19台の救急車、10台のごみ運搬車、スコピエ・ハーモニーへの一揃えの楽器などの贈与、水道工事、多目的ダム建設、水・空気汚染防止への協力とあって、スコピエ市民の間では最大の支援国は日本というイメージが定着している。これだけの仕事を支えるには専任の担当官が必要である。実際には本官1名と専門調査員1名が政務、経済の仕事を抱えながら働いている。しかも、大使、担当官の来訪はめったにない。外務省が予算も定員も他省との横並びで削減を余儀なくされ、大使館の増設も難しいということであれば、せめて旅費くらいは倍増すべきではなかろうか。
マケドニアに限らずどの被援助国の政府も国民も日本政府が国民の年間の総生産額を超えるような700兆円の赤字を抱え、外交活動の予算も削減し、大使館員の旅費もままならぬ状況の下で、米国に次ぐ国連分担金を負担し、大きな援助活動をしているとは夢だに想像していない。日本は敗戦後余りにも謙虚な外交に徹してきたような気がする。今からは、バルカンの現場で見る限り破竹の勢いにある中国、韓国に学び、日本は自分自身の外交の足場を固めるべきではなかろうか。
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