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2007-03-14 20:14
ロシアへのウラン濃縮委託では慎重な判断を
大西 健
大学生
第30政策提言「ロシア国家の本質と求められる日本の対露戦略」第1回政策委員会用コンセプト・ペーパーを拝読させていただきました。その内容に関連しまして、ロシアとのエネルギー協力について私見を述べさせていただきたいと思います。2月下旬、日本がロシアにウラン濃縮を委託することを検討中であるとの報道がなされました。資源大国との関係を強化するということは望ましいことではあります。しかし、近年のロシアの資源供給を盾にして圧力をかける振舞いには懸念を抱かざるを得ません。そして日本は北方領土問題という主権に係わる問題を抱えている以上、コンセプト・ペーパーに書かれているとおり、ロシアに対して「一時的な外交・経済関係の悪化を恐れるべきではない」のであり、「外交・経済関係などの犠牲も覚悟した首尾一貫した態度」で臨む必要があります。
そのような国に対し、日本のエネルギー安全保障上きわめて重要なウラン濃縮を委託するのは危険ではないでしょうか。少なくとも、ウラン濃縮を日ロ間の問題における交渉カードとされないだけのリスク分散策をしっかりと構築する必要があります。何よりまずは日本自身のウラン濃縮能力の拡大が必要です。現在の日本のウラン濃縮能力は年間使用量の1割弱に過ぎません。現在日本原燃が新型の遠心分離機を開発中ですが、これは2010年度以降に導入を開始、その後10年をかけて整備し、ウラン年間使用量の4分の1ほどを自前で濃縮できるようにすることを目指しています。しかしこれはまだまだ時間がかかりますし、今後の原子力発電の重要性を考えれば濃縮能力も不十分に思われます。特に日本の原子力政策は計画通りに進まずに遅れることが多々あることを考えれば、果たしてこの通りにウラン濃縮能力を整備できるのかも疑問です。新型遠心分離機開発への国の更なる支援と、着実な整備が望まれます。
ロシアとの関係強化は日本のエネルギー事情を考えれば必要不可欠なことであるとは思いますが、根拠の無い信頼をもとに関係を築くべきではありません。当面、ウラン濃縮能力に余裕のあるロシアにウラン濃縮を委託するとしても、そのままロシアに大きく依存するような状況を継続するのは問題だと思います。間違っても、ウランにおいてもサハリン・プロジェクトと同じ轍を踏むことが無いよう、十分なリスク分散策を早急に確立するべきであると思います。
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