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2015-09-09 06:46
無投票再選が「安保成立」へ弾み効果
杉浦 正章
政治評論家
小泉政権以来9年ぶりに首相・安倍晋三の長期政権が視野に入った。日本の政治は首相の1年交代が続いた低迷期から離脱し、今後3年、つまり2018年までの合計6年の安倍長期政権が確定的となった。任期中に必ず行われる解散・総選挙に圧勝すれば、2020年のオリンピック開会宣言を「退陣の花道」にする可能性も否定出来ない。折から平成最大の保革激突法案である安保関連法案が9月16日に特別委で採決の方向が固まり、与党の態勢も整った。好事魔多し、着地が極めて重要だが、まず成立の方向は揺るがない。成立すれば、「安倍政治」は解き放たれ、そのエネルギーを外交とアベノミクスの完成に集中することになろう。政治には弾みというものがあり、野田聖子の立候補を一蹴したことにより、自民党内は1週間後の法案採決に向けて、かつてない結束ぶりを示す結果となった。逆に野党は維新の分裂がいよいよ深刻化し、民主党は何をとち狂ったか、幹事長・枝野幸男が安倍再選について「本来の保守本流が絶滅した。むしろ、かつての保守本流の政策的理念は我々の方こそが持っている」と、誰が聞いても首を傾げる妄言を吐く始末。保守本流なら法案に賛成したらどうか、と言うことだ。野党は、法案への対応が極めてふまじめと言わざるを得ない。いくら政府が理を持って諭(さと)しても、全てを「戦争法案」のレッテル貼りに帰結して、外部勢力の扇動に使う。審議を党利党略に使っているのだが、これでは審議が進めば進むほど、デマが拡散して、国論が割れてしまう。
もう十分なる熟議を果たした。質疑を終わらせて、可決、成立させるべき潮時に到った。民意は野党のデマゴーグ作戦に惑わされるが、これが一時的であることは衆院での法案可決後の世論調査が如実に物語っている。あらゆる調査が、可決後下落したにもかかわらず、わずか1か月で内閣支持率が上向きに転じているのだ。一番からい朝日でも37%から38%に。読売は43→45、共同37→43,産経39→43,日経に到っては8ポイント上がって46%になった。支持と不支持の逆転も解消され始めた。歴代内閣でも40%台は高支持率を意味する。筆者は強行採決で成立させて、いったん30%台に下がっても、年末までには取り戻すと予想したが、この傾向を見ると来週成立させていったん下落しても、年末までにはまず支持率は回復するだろう。世論調査では、法案には反対が強いが、一過性で、内閣支持率の上昇志向には勝てない、という珍しい現象が生じているのだ。
根強い「安倍人気」の原因はマジックとも言えるアベノミクス効果と、中国、韓国への毅然(きぜん)たる態度が根底にあるのだろう。とりわけ今後は「9・3効果」つまり習近平の「戦争パレード」への反発が強く出て、政権支持へと回る可能性が強い。したがって一時的支持率の下落は問題視する必要は無い。今後は安倍の言うとおり経済重視の政策を展開すべきであろう。アベノミクス以来株価は上昇し、企業利益は拡大し、失業率も劇的に好転した。しかし、国民の実質所得は未(いま)だしだ。今後は富が滴り落ちるトリクルダウンが必要な段階だろう。自民党の党是である憲法改正も、来年の参院選の結果次第では議題になり得るが、肝心の9条改正が、集団的自衛権の行使を認める安保法制により、当分の間は重要ではなくなってきており、これにエネルギーを費やすのは疑問であるかもしれない。安倍の無投票再選は自民党にとって過去3回の国政選挙で圧勝した“神業信仰” が大きな要素を締めているのだろう。来年には参院選挙があり、安倍の任期中に衆院議員の任期が切れることから、安倍による解散・総選挙は避けて通れない。安倍はいまのところダブルを否定しているが、党略を考えれば再来年の消費増税の前の解散は、まずダブルしかチャンスはあるまい。過去2回のダブルは相乗効果が発揮され自民党は負けたことがない。したがって可能性は否定出来ない。
安倍は、地元で明治維新から50年後に山口県出身の寺内正毅、100年後には佐藤栄作が首相を務めていたことに触れ、「私は山口出身の8人目の首相。何とか頑張って30年(2018年)までいけば、(明治維新から150年後も)山口県出身の安倍晋三が首相ということになる」と述べた。この「何とか頑張って30年まで」の表現ではあと一期で終了ということになるが、8日の立候補に当たっての公約には、面白い表現がある。毎日新聞だけがここに着目した。同紙は「首相は公約で、東京五輪を『輝かしい未来への大きな起爆剤にしなければならない』として、『今ここから、私はその先頭に立つ覚悟だ』と訴えた。3年の任期中に成功への道筋をつける決意表明とも読めるが、首相周辺には『五輪の開会宣言を安倍首相にやらせたい』(森喜朗元首相)という声が少なくない」と報じたのだ。政治記者なら当然ここに目を付けるべきだろう。二期までの党則など、どうにでもなる。まだ気の遠くなるような道のりだが、あり得ないことではない。
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