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2015-08-28 06:46
維新の“分裂”で安保修正極めて困難に
杉浦 正章
政治評論家
これはもう割れているのではないか。大阪市長・橋下徹も府知事・松井一郎も「辞任」で目くらましをするのが得意だから、分かりにくくなっている。しかし、ことは単純だ。もともと維新はヤ党とヨ党の間の「ゆ党」と呼ばれてをり、内部に矛盾を抱えている。いずれは来る分裂を先延ばしにしただけのことだ。しょせん首相・安倍晋三と親しい橋下・松井と、民主党との再編を目指す代表・松野頼久らとは、水と油。端的に言えば、右か左かの路線上の衝突だから、早晩分裂だ。来月14日の週になると予想される安保法案成立を軸に、党内部の亀裂は決定的になるものと予想される。このため自民党は法案修正協議の軸足を、維新から日本を元気にする会など3小政党へとシフトしつつある。戦後まれに見る大法案は、超大型台風のごとく政治の全てを呑みこみ、政党に激動をもたらしてゆく。自民党だけは不思議と一致団結を維持している。しかし野党は次世代の党幹事長の松沢成文が、安保法制反対で離党を余儀なくされ、同党は安保支持で固まった。一方維新には党内に亀裂が走った。
そもそも幹事長・柿沢未途が、山形市長選で地元の反対する民主党の候補の応援をしたこと自体が、大阪側へのチャレンジに他ならない。死ぬほど民主党が嫌いな橋下の神経を逆なでする行為であった。盟友松井も激怒して、あわや分裂寸前にまでいったが、橋下にしては珍しい大人の対応で当面の分裂を食い止めた。なぜかと言えば、長ったらしい橋下の会見で重要発言が一つだけある。それは「安保法制は日本にとって重大な局面であり、こういう状況の時に内紛をやっている場合ではない」だ。珍しく国政への配慮を見せたのだ。これが意味するものは、橋下以下大阪グループは基本的に安保法案是認の流れであり、民主党出身の松野や柿沢とは激突のコースをたどらざるを得ないのである。こうした方向は安倍や官房長官・菅義偉との関係が極めて良好な事から生まれている。関係を決定的に良好なものにしたのは、安倍と菅が大阪都構想での住民投票を支持し続け、橋下にエールを送ってきたことだ。6月14日には安倍、菅、橋下、松井の4者会談が行われており、維新側からは松野らへの不満が述べられたという。その後最近松井と菅が会談している。安保法制をにらんで政権側のくさびはとっくに打ち込まれていたのであり、それが路線上の対立となって浮上したのだ。
山形の市長選挙などは単なるきっかけに過ぎず、路線対立の根は深いのだ。しかし維新が参院に提出した「対案」はとても与党側がのめるものではない。東京系ペースで作られ核心部分で法制の基本原理を覆すからだ。維新案は政府案が集団的自衛権行使の要件としている「存立危機事態」を認めず、個別的自衛権を事実上拡大する「武力攻撃危機事態」を新設するのが柱。これでは法案が骨抜きになり、作る意味がなくなるのである。また維新は民主党とさらなる対案の作成に動いているが、民主党の息がかかればかかるほど自民党がのめないものとなる。歩み寄りなどほぼ不可能であろう。これに対して、元気や次世代の党、新党改革の3党は、国会の歯止めを重視し、自衛隊の活動継続中は90日ごとに国会の再承認を義務付ける、海外活動を常時監視・事後検証する組織を国会に設置する、などの極めて分かりやすい修正案を提示している。おそらく自民党はこの程度ならのめるだろう。ただ本法案の修正と言うより、衆院の再可決を回避するため付帯決議にとどめる方向で調整が進み始めた。
自民党にしてみれば参院の維新は11人であり、3党は合計すれば15人だ。おまけに賛同する政党の数が増えるのは、国民に与える印象が全く異なってくる。枯れ木も山の賑わいだ。自民党は渡りに舟とばかりにシフトしつつある。今後維新の分裂指向がどの段階でより鮮明になるかだが、おそらく早い可能性がある。政府・与党は来月14日の週に安保法案を成立させる方向であろう。維新内部は修正問題や、採決への出欠などに関して極限の対立状態になるものとみられる。国会議員団の分裂がまず先行するかも知れない。ここで分裂しなければ11月1日の代表選挙に向けて動きが続くだろう。路線論争は過熱する一方だろう。代表選挙は国会議員も、地方議員も、一般党員も、等しく1人1票制であり、これは大阪系が圧倒的に有利であることを物語る。したがって、代表は大阪系になる方向であり、東京系は窮地に追い込まれる可能性もある。もともと松野は年末をめどに民主党との再編を実現する方針を明らかにしており、これに大阪系がついて行けるわけがなく、分裂の可能性は強まる一方であろう。
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