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2014-10-28 06:34
イスラム国の「エボラ自爆テロ」に警戒を
杉浦 正章
政治評論家
今主要国の諜報機関が血眼になってその活動を集中させているのが、イスラム国が目指している可能性の強い「エボラ自爆テロ」の動きだ。人間に感染させて、狙いをつけた国の都市に潜入させて、エボラ出血熱の細菌をばらまく。まさに「人間細菌兵器」である。最悪の場合は爆発感染・パンデミックへと発展しかねないローテク兵器である。世界の大都市は人間兵器に潜入されたらひとたまりもない。バイオテロを想定したものかどうかは不明だが、首相・安倍晋三は10月27日「今後、何が起きるか分からない。危機対応は盤石なものにする必要がある」と述べ、関係閣僚会議の早期開催を指示した。同時にエボラ出血熱への対応は国の安全保障上の問題だとして、厚労相・塩崎恭久に国家安全保障会議に感染の広がりや政府の対応などを報告するよう指示した。
狂気の武装勢力イスラム国が、細菌兵器に関心を示す兆候は既に8月から見られた。米誌「フォーリン・ポリシー」電子版が「イスラム国のシリア北部の拠点に残されたノートパソコンに、ペスト菌などを使った生物兵器の作製手順や実験方法が記された文書が保存されていた」と報じたのだ。同誌は「イスラム国が生物兵器を既に所持しているかどうかは不明だが、少なくとも生物兵器の取得に力を入れていることを示している」と警鐘を鳴らしている。ノートパソコンには、生物兵器を含む大量破壊兵器の使用を正当化するイスラム教のファトワ(宗教見解)が記された文書も見つかっている。
さらにアメリカ海軍大学校の国家安全保障問題教授・シム・アルカスは10月6日、世界有数の経済誌である「フォーブス(Forbes)」に「イスラム国はエボラ・ウイルスをローテク生物兵器として使う可能性がある」と警鐘を鳴らした。アルカスは、その方法について 「西アフリカで故意に自分自身を感染させ、そして発達した航空網を使うことで全世界のどこにでも致命的なウィルスを簡単に運搬できる。テロ組織は運び屋として人間を使用するだけだ。感染すれば、あとは移動するだけなので難しいことはない。イスラム国が実行を決定すれば、少数の人間をエボラ流行地に派遣。感染させれば後は”選りすぐった都市”に彼らを渡航させればよい」と述べている。
このアルカス警告は注目する必要がある。絵空事と見てはならない。国家の安全保障はあらゆる危険の可能性を除外すべきではないからだ。エボラ熱の細菌の潜伏期間は2日から21日であり、発症すれば接触感染で他人に伝染する。イスラム国は2万人に達する外国人傭兵の志願者に伝染させるか、帰国予定者をだまして伝染させるかして、「人間エボラ兵器」を製造する。帰国者は他人への接触を繰り返し、伝染を拡大する。街娼などを利用すれば、その伝搬力は大きく、当局の掌握も困難だろう。また旅客機、地下鉄など閉鎖空間でウイルスの入った液体を噴霧させれば、伝染効果は極めて大きい。対象の都市はまずニューヨークやロンドン、パリなどが狙われるだろうが、油断していれば東京だって危ない。そのようなテロがニューヨークで発生した場合、大統領オバマはほぼ確定的に地上軍を投入して、イスラム国壊滅作戦に出るだろう。日本政府の水際作戦も万全のものであろうが、未然に防ぐための措置は、いくら取っても取り過ぎることはない。安倍がエボラ出血熱への対応を国家安全保障上の視点で捉えたのは正しい。今後は、主要国首脳が一堂に会するエボラ・パンデミック防止のための国際会議を提唱してもよいのではないか。世界的協力態勢の確率が一刻も早く必要であるからだ。
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