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2007-01-22 09:32
国際的発信力の強化のために
角田 勝彦
団体役員・元大使
就任後初めての外遊として昨年10月安倍総理が行った訪中は、中国国営新華社通信の時事解説誌による2006年10大国際ニュースの第6位に選ばれ、「両国の交流が日々拡大し、中日関係が徐々に『冷』から『暖』へ向かい、改善の新たな希望が生まれた」と評価された由である。その後本年1月14日フィリピンでの首脳会談では、温家宝中国首相の4月上・中旬来日が固まり、さらに夏から秋にかけての安倍総理の訪中招待が行われたと報じられる。これにより、2007年を日中戦争開始(とくに南京事件)70年として展開されると危惧されていた反日キャンペーンは、穏やかなもので収まる可能性も出てきた。安倍訪中時の合意により昨年末始まった日中の学者による「歴史共同研究」も両国関係発展の障害にしないとの了解があるようである。もちろん靖国問題などの進展によってはどうなるか判らない。気をゆるめてならない。
各国が国際社会における自国への理解の促進を求めて広報活動を行うのは自由である。留意すべきは、その際に他国のネガティブ・キャンペーンを行う方法が良くとられることである。南京事件はその良い例である。最近サンダンス映画祭で公開された米国のドキュメンタリー映画「南京」は南京事件に際し中国人を救済した外国人の一人を「中国のシンドラー」と位置付けている由である。まだ見ていないこの映画の批評は出来ないが、当時の日本はユダヤ人抹殺を謀ったナチスドイツと同じと言われるのに等しい。日本は国際場裡において口べた、演出べたである。静かに実績をあげる国柄を評価する声もあるが、ネガティブ・キャンペーンには断固反論しなければならない。黙っていると誤解や軽侮が世界に広がる。ポジティブ・キャンペーンも水の泡になる。
さて次に論じたいのはポジティブ・キャンペーンの強化の問題である。内容はもちろんだが、中核は方法である。メディアとして、とくに英語でのテレビ放送とインターネット発信は重視すべきである。我が国も最近テレビなどを通じる国際発信力強化を検討している。総務省は、昨秋以来、民間放送局などが出資する新たなNHK子会社による外国人向けテレビ国際放送計画に関する検討会を開いており、NHKの短波ラジオ国際放送に加え、NHKテレビ国際放送を放送法に基づく放送命令の対象にする考えを持っていると伝えられる。民は経済的理由から参加に躊躇しているようである。NHK受信料の支払いを08年度から義務づける放送法改正案も具体化しつつあるが、その代わりにNHKは国際社会における日本への理解を促進させ、かつ日本人の国際問題の理解を助ける役割を中心的任務の一つに置くべきである。
さらにNHKの関連で、アナログテレビ放送の2011年終了の問題がある。数億台のテレビなどがそのままでは使えなくなるというのは、その時期が近くなると大変な政治的問題になるだろう。アナログ存続が強く要求されるだろう。技術的にはともかく財政上の問題が大きいと思われるが、NHKの国際的新任務をアナログ存続と結びつけることは無理だろうか。
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