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2014-08-20 17:57
闇の中に消えた武器ーアフガニスタン戦争の末に
川上 高司
拓殖大学教授
8月28日、国防総省の特別査察官は、アメリカが2004年以来供与してきた武器類があまりにも過剰であり、しかもそのほとんどが行方不明になっているという事実をつきとめた。2012年の時点ではアフガン軍と警察の規模は352,000人で、武器もその規模に見合う分だけ供給された。ところがその後規模は段階的に縮小されてきており2017年には228,500人になる予定である。だが、国防総省の武器の供給は2012年の時のままの数となっていたため供給過剰に陥っている。
2004年以来6億ドルを超える予算で アメリカはアフガニスタンに対して 747,000丁を超えるライフルや拳銃などの小火器類を供給してきた。議会はその武器の追跡を国防総省に命じていたが、国防総省は追跡に失敗していたことになる。たとえばAK-47は本来の数よりも83,184丁も多く供給されているはずだが、ほとんどが行方がわからない。武器庫にはM-16が939丁なくてはいけないはずなのに199丁しか発見できなかった。おそらく発見することは不可能だろう。
2003年にイラクへアメリカが侵攻するとアメリカ政府はイラクにのめり込み、アフガニスタンへの関心を失ってしまった。政府や国防総省は資金を投入するだけでコントロールや監視をせず放置していたため、供給した武器が消えるという恐ろしい事態が発生し、さらにその状況に気がつくのが遅れた。手続き上の問題もある。アメリカ側の武器の供給の管理と供給後の管理のシステムが異なっていたうえ、アフガニスタン軍の管理システムも異なっていた。アメリカ側の管理はコンピュータ上の管理だったが、アフガニスタン軍は手書きの書類で管理していた。3つの異なる管理システムが混在しただけでなく、アフガニスタン警察に至っては管理システムそのものが存在しなかった。
シリアの内戦でアメリカは反政府側に武器の支援を継続している。武器支援を決定する際にその武器が誰の手に渡るかわからないという反対意見が出た。オバマ政権はきちんと追跡することを約束した。だがアフガニスタンの状況からわかるように、いったんアメリカの手を離れてしまった武器は、追跡不能になる可能性が高い。いくら高度な追跡システムを使用しても結局は闇の中へと消えていく。末端まで責任のもてない武器の支援はするべきではない、とアフガニスタンの失敗に学ばねばならない。
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