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2007-01-13 20:01
「東アジア人的資源開発センター」の設立を提唱する
トラン・ヴァン・トゥ
早稲田大学教授
東アジアの共同体構築に向けて活発な動きや議論が続いているが、各論的諸問題の検討と提案がまだ少ない。具体的問題の共同研究・協力体制の積み上げによって共同体構築の説得力が強められるし、その方向付けも明確化される。
そのような各論的問題の1つは労働力の域内移動である。現在、東アジア地域、特にASEAN諸国や中国では熟練労働力の供給不足と非熟練労働力の供給過剰が並存している。前者は産業構造の高度化や直接投資の新規導入の障害としてよく議論されているが、後者の問題は十分に取り上げられていない。今後、非熟練労働力は賃金が高い日本や韓国、台湾などに移動する傾向が強まり、なかでも自発的移動・不法流入の数が多いであろう。
非熟練労働の活発な移動は文化摩擦をもたらす可能性もあるほか、長期的には労働輸出の国にとっても望ましくない。労働輸出による送金だけでは経済が発展しないからである。この問題への対応として短期的には秩序ある国際的労働力移動を推進し、しっかりとした管理体制を構築しなければならない。そのためには労働力移動の実態の正確な把握や問題点の発見などについて、地域協力が必要である。そして、長期的対応が何より肝要である。まず介護、看護、建設など各国間の移転が不可能な産業の場合、経済連携協定(EPA)などの協力枠組みで計画的労働移動を推進するが、貿易が可能な産業については、各国の比較優位構造に沿って育成・発展させ、雇用を創出させることによって労働力の海外流出を最小限にする必要がある。そのために、非熟練労働力の教育向上、職業的訓練を進めると共に、工業化、特に労働集約的工業の発展が重要である。このような長期戦略に対する地域協力が効果的である。具体的には先進国・先発国が後発国に教育普及・職業訓練に関する協力を進めると共に、技術移転・産業移植を促進していくことである。
これらの活動を体系的、持続的に進めるために、東アジアに「人的資源開発促進センター」といった国際機関を設立することを提唱したい。
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