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2014-06-10 23:12

オバマの戦争:アフガニスタンの未来

川上 高司  拓殖大学教授
 オバマ大統領は先月27日、2014年以降のアフガニスタンに駐留するアメリカ軍の規模について発表した。現在は32,000人が駐留しているが、2014年末までには9,800人に削減、2015年半ばにはその半数にまで減らし、2016年以降は大使館の護衛などに1,000人ほどを残すというプランだ。ただし、2014年以降の駐留にはアフガニスタンとの協定が締結されていなければならない。カルザイ大統領はその署名を拒否しているが、6月に行われる大統領選挙の決戦投票で新しい大統領が誕生し、新大統領が署名すれば、オバマ大統領のプランは実施される。署名すれば2016年までに40億ドルのアフガン軍への支援も行われることになる。

 アフガニスタンのダンフォード現地司令官は、このプランを「アフガニスタンの未来がようやくはっきりしてきた」と歓迎している。一方でタリバン側は、「外国兵が1名でも残っていれば、我々は闘う」と外国軍の駐留を拒絶している。いまだ脆弱なアフガン軍が士気の高いタリバンにどこまで対抗できるのかは未知数であり、米軍撤退後に力の真空が生まれて、タリバンが盛り返す可能性は否定できない。

 だが、オバマ大統領は先月27日の演説では「アフガニスタンの国家建設のための戦争はもう終わった。アフガニスタンの未来はアフガニスタンの国民が決めることだ。アメリカには何ら責務はない」と言い切り、何があろうと自らの任期中には撤退するという強い意志を示した。

 前ブッシュ政権が始めたアフガニスタン戦争は13年という長い年月をかけた国家建設の闘いだった。その国家建設とはアメリカにとっての理想の国家を目指していた。自ら仕掛けた戦争でアフガニスタン社会を破壊し、多くの国民を犠牲にし、また難民を生み出した。その事実に「アメリカの責務はない」はずはない。アメリカが関与したこの13年間は何だったのか。今こそ問うべきである。
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