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2014-04-28 17:28
米露関係の悪化を望むネオコンたち
川上 高司
拓殖大学教授
米国務省の中東担当者が、ソ連崩壊後現在に至るまでにアメリカはウクライナの民主化に対して50億ドルの支援をしてきたことを明らかにした。そのため最近のウクライナ内紛に関して裏で扇動しているのではないかとの疑惑がもたれているが、それについては担当者は「あくまで自発的なものだ」と否定した。ウクライナを巡ってアメリカとロシアの関係が悪化しかねない状況にあるが、関係悪化を望む勢力がアメリカ国内に存在することは確かだ。昨年来アメリカとロシアは良好な関係を構築し、それがイランとアメリカの宥和やシリア問題に大きな影響を与えて来た。裏を返せば、ロシアとアメリカの関係悪化は中東情勢に悪影響を与えるということである。
イランとアメリカの宥和路線を望まず、シリアのアサド体制優位を望まない勢力といえば、ネオコンである。かつてブッシュ政権時代にイラク戦争へとアメリカを駆り立てた彼らは、今再び静かに着実に勢力を盛り返しつつある。彼らが政権への圧力を強めていく可能性は否定できない。「オバマ政権は、ウクライナ情勢の行方を見つつ、悪化するようであればさらなる経済制裁を検討するが、それはロシアを直接対象にするものではない」と報道官は述べた。「ロシアを刺激しないように」という配慮が見て取れる発言である。ケリー長官はラブロフ外相と電話で情報交換を密にすることで合意するなど、いまのところアメリカは冷静さを失っていない。
一方のロシアも冷静に対処している。ラブロフ外相はケリー長官に対して電話会談では「ウクライナ暫定政権が治安を回復し、過激派の暴力を止めることに責任を持って欲しい」と要請した。「支援するなら、監督責任をまっとうしてから、ロシアに文句を言いなさい」ということだ。これはウクライナにアメリカが関与することを認めるとも取れる発言である。ロシアがウクライナ東部に軍事介入するかどうかについても、「東部の自治体首長から軍の派遣要請は来ているが、正直困惑している」と、軍事介入には慎重な姿勢を見せている。
イランとアメリカの宥和路線が進む最中にウクライナ情勢は勃発した。シリアでアサド政権が優位に立つにつれてウクライナ情勢は激化していった。そしてネタニヤフ首相とオバマ大統領のぎくしゃくした関係、サウジアラビアとのこじれた関係など、アメリカをめぐる外交関係は大きく変動している。遥か彼方のウクライナがそのあおりを受けたわけではない、とは言い切れない。
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