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2014-03-01 13:18
スコットランドの大学理事になったスノーデン
川上 高司
拓殖大学教授
アメリカ国家安全保障局(NSA)の大規模盗聴をリークしたエドワード・スノーデンは相変わらずモスクワに滞在中と言われている。このリークでアメリカはドイツ・メルケル首相から不信感をつきつけられて、その関係修復に必死である。メルケル首相は2月15日、「EUはアメリカから切り離された独自の情報ネットワークを構築するべきだ」と述べて、ヨーロッパをアメリカのスパイ活動から守る必要性を訴えた。メルケル首相の不信感と怒りはそれほど深いのである。アメリカはそこを見誤ってはいけないだろう。
ヨーロッパではいまだにNSAの大規模盗聴問題が収まっていない。イギリス連邦のスコットランドにあるグラスゴー大学では、18日学生による理事選挙があり、圧倒的支持を得てスノーデン氏が当選、このたびグラスゴー大学の理事に任命されることとなった。今後3年間、スノーデンはグラスゴー大学学生の代表として大学運営側と向き合うことになる。スノーデンは「NSAの盗聴はプライパシーの侵害を超えて、学問の自由に関わる問題である」ととらえ、「自由な思想を保護することが自分の役割だから立候補した」とコメントした。
スノーデンはヨーロッパの学生の間では人気が高い。彼は内部告発者としてヒーローとみなされているのである。もちろんスノーデンの当選は「愛国心を育ててこなかった教育の失敗」の証だ、と上の世代は嘆く。そんな嘆きにも若い学生たちは、「この動きに追従する学校が出てきてほしい」と怯む様子はない。彼らは「学問の自由は自分達で守る。そのためのスノーデンである」という。スノーデンはもはや学生たちの「自由」の象徴となっているのである。
メルケル首相やグラスゴー大学の学生が「アメリカから自由になりたい」と主張するのは、裏を返せば「アメリカの威信が低下した」ということなのであろう。世界はますます無極化に向かっている。
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