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2014-02-28 20:39

シリア和平会議「ジュネーブ2」をめぐる混迷

川上 高司  拓殖大学教授
 1月17日、シリア反政府連合はシリア和平会議「ジュネーブ2」へ出席することを決めた。そしてバン国連事務総長は19日、イランを「ジュネーブ2」に招待した。イランも招待を受けて出席する意向を示していた。「ジュネーブ2」はシリア問題にむけて国際社会が本気で取り組む場となるはずだった。だが、イランの参加にシリア反政府側も、アメリカも、難色を示した。イランが参加するならば「ジュネーブ2」には出席しないと反政府側が反発、一方でロシアはイランの参加を強く望んでおり、バン国連事務総長は窮地に立たされた。

 イランとアメリカの立場は根本的に異なる。アメリカや反政府側は、アサド大統領の退陣と政権移行を求めている。一方のロシアやイランは、少なくとも今後しばらくはアサド大統領の留任を主張する。そのため政権を手中におさめたい反政府側は、イランの参加は絶対に認められないのである。アメリカは政権移行を容認することが参加の条件だとしていたが、イランは会議への参加は無条件だとつっぱねた。バン国連事務総長は結局アメリカの意向にしたがって、招待撤回を決めた。会議の参加者を巡ってのこの混乱は、シリア問題の困難さを象徴しているかのようだ。

 だが、現地では内戦の激化で市民が疲弊している。アルカイーダ系でもっとも過激なISIS(Islamic State of Iraq and Syria)、同じアルカイーダ系のアル・ヌスラ、サウジアラビアの支援を受けているイスラム戦線(Islamic Front)、 最も穏健なシリア自由軍(Free Syria Army)が、主として相互に戦闘をしている。そこへシーア派組織ヒズボラの戦闘員が加わっているシリア政府軍が加わっているため、戦闘は熾烈を極めている。

 これ以上市民の犠牲も難民も増やさないためには、そして市民が普通の生活を取り戻すためには、一刻も早い停戦が必要である。すでに停戦に入っている地域もあるが、多くの地域はまだ戦闘が続いており、停戦後の権力を争う政治抗争をしている場合ではないのである。「ジュネーブ2」は、停戦を実現する場でなくてはならない。まず停戦に向かって国際社会は万難を排して取り組まなくてはならない。現地から見れば、今のジュネーブはあまりにも現実からかけ離れているに違いない。
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