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2014-02-21 14:24
注目されるイランの対アルカイーダ姿勢
川上 高司
拓殖大学教授
イラクのアンバル地方ではアルカイーダと繋がりのあるスンニ派過激派組織が勢力を伸ばし、主要都市であるファルージャを支配下に収め、さらに支配地を拡大しつつある。マリキ首相は、アンバル地域のスンニ派指導者たちに政府軍とともにアルカイーダと闘うように要請した。
そのマリキ政府をバックアップするべくケリー国務長官は、アンバル地域の政府軍に対して軍需品の供給や軍事アドバイスといった軍事支援をすると表明した。ブッシュ政権下の米軍はイラク侵攻後、アンバル地域のスンニ派武装勢力と熾烈な戦闘を繰り返し、ファルージャの奪還には多大な犠牲を払った。今また軍事支援を口実にアメリカが介入するのでは、という憶測が生じるのは当然だが、ケリー長官はきっぱり派兵を否定している。
一方で、シーア派マリキ首相と近いイランは、イラク政府軍に軍事支援を行う用意があると表明した。イランも、支援は軍需品やアドバイスにとどめ、派兵はしないとしている。期せずしてイラクの危機にイランとアメリカが同じような対応を示していることは興味深い。アメリカにとってアルカイーダは今でも最大の敵である。またシーア派イランにとって、スンニ派過激派組織であるアルカイーダは敵である。宗派闘争は熾烈で、昨年一年間でイラクでは7000人が犠牲となったと言われている。
昨年来のイランとアメリカの宥和路線を考えると、イランとアメリカはアルカイーダという共通の敵に対して今後共同歩調を採る可能性がある。そうなれば米国の対イラン宥和路線はますます深化するに違いない。ただ、両国とも内部に抱えるタカ派や、サウジアラビア、イスラエルなど周辺国とどうバランスを取るかという難問にも直面する。ロハニ大統領とオバマ大統領がどこまで国内の抵抗勢力を抑えられるか、に両国の外交はかかっている。そしてイラクの問題はシリアの内戦の問題にも影響を与える。今年はイランとアメリカの今後を見定める重要な年となりそうである。
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