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2006-12-26 22:43
新しい海洋立国へ「海洋基本法」を制定せよ
秋山昌廣
海洋政策研究財団会長
日本は海洋国だの海洋大国などと言われるが、はっきりとした国家戦略として、海洋で国(身)を立てようという動きはこれまでなかったように思う。第2次大戦終了後、吉田茂首相が海洋立国を意識し、大陸国ではなく海洋国たる米英との関係を重視したが、これは、両海洋国が国家の基盤として重視した自由、民主主義、貿易、海上交通に我が国の復興と発展をかけようというものであった。
実際、海洋は、海上交通や臨海工業地帯などを通じ我が国の奇跡的経済発展に大きく寄与したのみならず、安全保障にとっても、蛋白源確保においても重要な役割を一方的に果たしてきた。我が国のみならず人類は、言わば海洋に護られてきたといえる。しかるに現在、国際社会は、国連海洋法条約とリオ地球サミットのアジェンダ21の下、海洋の環境、資源、利用、安全保障などのためには人類の側から統合的、総合的に海洋を管理(manage)して、これらの利を確保していかなければならないという考えに、大きく変わってきており、言わば海洋を護る段階に入ってきた。
我が国では、海洋に関する行政は8以上の省庁にまたがっており、かつ、縦割りが徹底していると言っても過言ではない。これでは、東シナ海に見られるような、多くの分野に関わる海洋事案たる境界画定やガス田開発、さらには海洋環境や海洋安全などにおいて、国家が一つの意志を持って有効な対応をすることは不可能である。
今春立ち上がった「海洋基本法研究会」(世話人代表武見敬三、座長石破茂)は政治家、学識経験者、科学者、産業人、関係行政機関代表者などが参加して海洋問題を議論してきたが、先般12月7日、海洋政策大綱を採択し、海洋基本法を早急に制定することを提言した。またこの中で、内閣に海洋政策会議を設置し、海洋担当大臣を任命し、海洋基本計画を策定すべきことなどが提言された。これを受けて、自由民主党は次期通常国会へ議員立法による基本法案の提出方針を関係部会で決定し、公明党、民主党も基本法制定に向けての準備が始まっている。
当海洋政策研究財団は、この海洋基本法研究会の事務局の役を果たしてきたが、海洋基本法制定に向けて、さらにできるだけの努力をしていきたいと考えている。
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