国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「百花斉放」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2013-12-21 11:41

米ソ対立と米中対立の違いはどこにあるか

若林 洋介  学習塾経営
 同じ価値観の対立でも、米ソ対立と米中対立とでは本質的な違いがある。米国の考える「自由主義」の概念は、おおまかに言って「精神の自由(信教・言論の自由)」と「経済活動の自由(通商・貿易の自由)」とに分けられる。旧ソ連の場合、「精神の自由」も「経済活動の自由」も両方とも無かったが、中国の場合、「精神の自由」は無いが「経済活動の自由」は存在している。米国側からみると、キリスト教の布教活動ができないことには不満が残るが、通商・貿易が自由にできるならばあえて敵対関係に入ることは得策ではないということになる。しかも現在の中国は、米国国債の最大の保有国となっている。      

 また通商・貿易関係が深まれば、人・モノの交流がそれについて廻ることになるので、国民同士の交流も盛んになり、信頼関係も醸成されてくる。しかも、米中関係では、日中戦争のような大規模な軍事衝突は歴史的にも経験していない。同じ価値観の対立でも、米ソ関係のような強烈な相互不信と深い疑心暗鬼の状態は、米中関係には生じることは考えられない。また習近平主席をはじめとする中国首脳部の子弟たちは、ハーバード大学などの米国の大学で留学生活を送っている。
                   
 したがって、安倍首相の対中外交戦略が、かつての米国の対ソ包囲網外交のように、軍事的緊張をも辞さず、それに米国をも巻き込もうということであるならば、米国としては従いてゆけないということになる。

 また旧ソ連における体制崩壊の影響は、ソ連体制が閉鎖的経済圏を形成していたために、自由主義経済圏に対して大きな影響はなかったが、中国における体制崩壊の経済的影響は恐るべきものとなる。安倍首相が、米ソ対立をモデルにした「封じ込め外交」を展開しようというのであれば、それは時代錯誤でしかないということを自覚すべきだ。
>>>この投稿にコメントする
  • 修正する
  • 投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:5636本
公益財団法人日本国際フォーラム