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2013-12-05 19:55
イラン核合意の立役者はバーンズ国務副長官
川上 高司
拓殖大学教授
11月24日、イランと6カ国の協議はイランの核問題で合意に達した。1979年以来断絶していたアメリカとイランの関係に改善の兆しが見えたのは、9月の国連総会だった。そのとき両国の首脳は直接言葉を交わした。その歴史的瞬間からわずか3か月で合意に達したのである。ロハニ氏が6月のイランの選挙で大統領に選出されると、その後の動きは速かった。8月上旬にはオバマ大統領とロハニ大統領は書簡をやりとりした。その後水面下での交渉が始まる。アメリカ側はウイリアム・バーンズ国務副長官、ジェイク・サリバン国家安全保障担当副大統領補佐官、プニート・タルワー国家安全保障会議スタッフの3名、イラン側は明らかになっていないが、おそらく2名の副外相がカウンターパートとして交渉にあたったようである。
国連総会と並行して、ケリー国務長官とザリフ外相の会談、大統領間の電話会談も彼らがお膳立てしたのである。そしてバーンズ国務副長官は6カ国協議と並行して、2国間協議を進行させ、11月24日の歴史的合意へと導いた。11月20日から始まった協議では、メイン会場となったジュネーブのホテルとは別の場所に拠点を構えて会議を見守り、必要に応じて協議会場へメッセージを送った。両地点を頻繁に往来するタルワーの姿が目撃されていたので、おそらく彼がメッセンジャーだったのだろう。
国務副長官という立場は地味である。長官は華々しく脚光をあび、その行動は万人の知るところとなるが、副長官の行動はほとんど知られない。バーンズ氏の行動もこの数ヶ月はほとんど伏せられていたが、誰も気にとめなかった。まさに影の立役者である。バーンズ氏は2005年から2008年まで在ロシア大使を務めた後、アハマドネジャド大統領時代の6カ国協議の交渉官を務めた。イランとの人脈が深く、また6カ国協議で鍵を握るロシアとの気脈も通じている。まさに今回の外交の舞台裏にふさわしい人物だった。
サリバン氏はオバマ1期目ではヒラリー国務長官の主席補佐官を務めた人物である。またタルワー氏はバイデン副大統領が上院外交委員会の委員長時代に同委員会のスタッフを務め、2009年からは安全保障会議でイランやイラク、湾岸諸国を担当していた。いずれも外交政策や中東に通じた専門家だった。 まさにオバマ政権の真骨頂ともいうべき外交交渉であろう。
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