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2013-12-02 06:54
安倍・バイデン会談で“尖閣連携”を確認せよ
杉浦 正章
政治評論家
軍部というものはどうも形勢不利になると「大本営発表」をしたくなるものらしい。それがまかり通るから、軍部に操られる中国国民は不幸だ。11月29日午前“中国大本営発表”によると、「中国空軍機は緊急発進し、自衛隊機10機と米国偵察機2機を確認した」のだそうだ。政府筋は「馬鹿馬鹿しくてコメントできない」と言う。自衛隊機が10機編成で尖閣諸島周辺を飛ぶなどということは金輪際あり得ないからだ。発表が「確認した」であり、防空識別圏設定以来中国が言い募ってきた「防衛的措置を講ずる」ことがなかったことは、そこまでうそをつくとばれるからだ。紳士的な防衛相・小野寺五典は「とくに中国機が近接してきたとか、特異な行動を取ったとかは聞いていない」と述べたが、これは平たく言うと「うそつくな」である。
しかし、この大本営発表が中国国内で通用するということは、日本の大本営発表がかつて「進め1億火の玉だ」に直結したように、いつでも「進め13億火の玉だ」を作り得ることであろう。反日教育の“財産”をもつ中国は、床に油をまいてあり、火をつければ暴発する仕掛けになっているのである。自衛隊機に中国機が撃墜されれば、反日暴動の火の手が全国で舞い上がるように仕組まれているのだ。したがって、よほどのことがない限り、自衛隊は手を出せない。よほどのこととは、1983年の大韓航空機撃墜事件の二の舞のような事態である。日航機が中国空軍によって撃墜されそうな事態となれば、躊躇せずに正当防衛で銃火を交えなければなるまい。見殺しにすれば、その時点で安倍政権はサドンデスになり得る。また米軍機が撃墜したのなら、まず反日暴動には発展しまい。一触即発の状況下で、政治の神経戦・心理戦が今後長期にわたって展開されてゆくことになると、政府も国民も覚悟した方がよい。中国では「世界の敵になってしまった」といったツイッターが目立っているというが、ここは本当に「世界の敵」の「孤立化」を遠慮なく進めるべきだ。
中国の狙いは、防空識別圏の設定により、日本の尖閣国有化を断念させ、「棚上げ」に持ち込むところにあり、これはまさに小野寺が言う「一方的、独善的対応」そのものである。日本が受け入れることは到底あり得ない。まず日本が行うべきことは、盛りあがった中国批判の国際世論を外交的なアドバンテージ確保に結びつけることだ。かねてから述べているように、国連での非難決議でもよい、提出して中国に拒否権を使わせて、その異常性を際立たせるのだ。事故が発生した後の決議では遅い。加えて、日米の絆を一層強化させなければならない。ここに来て一部外交軍事評論家の間で米国が民間機のフライトプラン提出を容認したことに関して、「すわ日米に亀裂」とばかりに大騒ぎしている向きが多い。これは木を見て森を見ない浅見だ。岡本行夫に至っては、NHKで「ケネディ大使を通じて、いかに日本が重大に受け止めているかをオバマ大統領に伝えよ」と息巻いている。
しかし、米国の航空会社の飛行計画提出は一種の内政問題であり、それほど目くじらを立てるものでもあるまい。米国各社が提出した既成事実があるのに、首相・安倍晋三も小野寺も「米政府が民間会社に要請したことはないと、外交ルートで確認している」と繰り返すが、これも言い訳じみて見苦しい。国務省は容認を確認しているではないか。しかし、日米で温度差があっても問題はない。見るべき重要ポイントは、米政府が軍事・民間分離方式を選択したことなのである。外交・安保的には日本より素早く国務・国防両長官が異例にも一致して対中非難の声明を出したことで十分である。とりわけ国防長官・ヘーゲルは米国の日本防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が尖閣に適用されるとの認識を明言しており、これ以上の強い対中けん制はない。さらに加えて、米軍は冷戦時を彷彿とさせる行動に出たではないか。B52爆撃機の二機編隊による示威行為に中国はなすすべを知らなかった。日本は領土問題に直結しているが、米国は少なくとも領土問題ではない。その差が出ただけであり、大局を見れば日米同盟は現在最高潮で有効に作動している。
したがって、安倍は12月3日の副大統領・バイデンとの会談では、小異にこだわらず、尖閣での日米連携を前面に押し出して、これを確認すべきである。バイデンは上院議員を7期も勤めた民主党の“重鎮”であり、飲み込みが早く、有能と言われている。偶然にも防空識別圏問題に合わせるような日、中、韓3国訪問となった。バイデンは米政府のレクを十分に受けての来日であろうが、日本の生の声をしっかりと聞かせて、習近平との会談に臨んでもらったらいい。少しでも民間機問題などで日米に意見の齟齬があるような気配を見せれば、中国の思うつぼとなる。中国は日米関係にくさびを打ちたくて仕方がないのだ。むしろ、米国の民間機別扱いは、対中懐柔に役立つくらいの度量の大きさが大切だ。
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