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2013-10-24 15:14
議会に対するヘーゲル米国防長官の怒り
川上 高司
拓殖大学教授
オバマ大統領が債務の上限の引き上げを求めていた一方で、議会の共和党は医療保険制度について大統領に譲歩を求めていた。おたがいに妥協しない強硬な姿勢を見せていたため政府機能が一部閉鎖し、オバマ大統領はAPECすら欠席して、国内政治を優先せざるをえなくなった。政府機能閉鎖は解除されたものの、10月17日までに債務上限の引き上げが議会で承認されなかった場合、デフォルトが起こり、経済が混乱に陥った可能性が高かった。
だが、政府機能の一部閉鎖時、デフォルトよりも差し迫った危機が国防総省を被っていた。穏健なヘーゲル国防長官が「怒り心頭に達する」と憤慨していたのだ。それは、戦死した遺族へ支払われるべき「見舞金」が、政府機能の閉鎖に伴い滞っていたからである。アフガニスタンでは今なお戦死者は絶えない。急ぐべき「見舞金」が議会と大統領の政争のため支払われないことはあり得ない事態なのだ。
現在兵士の給与は後払いとされていて、それ自体も「噴飯もの」なのだが、見舞金の不払いは悲しみにくれる遺族に追い打ちをかけるような仕打ちで、葬儀代も出せない場合もある。国防長官は「国に尽くした兵士やその家族に対して敬意が払われていない」と、怒りのボルテージは上がる一方だった。ヘーゲル国防長官が怒るのは無理もない。国防長官は自らの経験から「国防総省にとっては、兵士やその家族への気遣いこそが最も重要な任務」という信念を持っているのだ。国が気遣いをしなくなったら、それこそは米軍の危機である。
見舞金支払いは、予算が付くまでは「フィッシャーハウス基金」という個人の基金が肩代わりして、予算が付いた段階で国防総省から基金側へ返金されることになったため、ヘーゲル国防長官の怒りも落ち着きつつあるが、「国防総省は、兵士やその家族に対して全力で責任を果たす。議会もそうすべきだ」と、厳しく問題解決を迫った。アメリカの政治サイトであるリアルクリアポリティクスの直近の世論調査のまとめによれば、議会への不支持率は82%、支持率は10.5%となっており、オバマ政権の1期、2期を通して最低の支持率を記録した。だれのための議会なのか。党利ではなく、民主主義の本質に立ち返るべきだろう。
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