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2013-06-02 11:29
歴史認識と価値観外交
若林 洋介
学習塾経営
安倍首相の価値観外交は、自由と民主主義の価値観を共有する諸国との結びつきを強固にする外交であるとされている。この安倍首相の価値観外交の立場に立つと、韓国との外交関係は良好に展開されると考えるのは当然であろう。このことは安倍首相の政治理念を表明した『美しい国』にもはっきり述べておられる。ところが日韓関係は、靖国参拝をめぐって、また歴史認識の問題をめぐって大きくゆらいでいるのはどうしたことか。
特に歴史認識の問題は、安倍首相の「侵略の定義は定まっていない」という発言によって、自由と民主主義の価値観に基づく最大の同盟国であり、友好国である米国の世論からも、厳しく批判されてしまった。安倍首相の大きな勘違いは、自由と民主主義の価値観と歴史認識とは、国際社会においては一体のものとして位置づけられているという事がまるでわかっていないという点にある。
つまり戦後の自由主義陣営に属する諸国家においては、自由と民主主義の価値観が共有されていると共に、第二次大戦と戦後秩序形成のプロセスに関する歴史認識が共有されているという点である。ということは、自由と民主主義の価値観は共有するが、第二次大戦の意義に対する歴史認識は共有しないと言う論理は、全く通用しないということなのである。第二次大戦の意義とは、米・英両首脳によって明らかにされた「大西洋憲章」における“ナチスの暴虐との闘い”であり米・英・中の首脳によって示された「カイロ宣言」における“侵略国・日本を罰するための闘い”という位置づけである。
もちろん民間レベルまた非公式な場での議論は自由に議論なされるべきであるが、日本政府の首相や閣僚がこの認識に異議を唱えることは、日本が自国をいまだにナチスや軍国日本の一部として認識していると表明することにほかならず、日本が今後とも米国を中心とする自由主義陣営諸国の一員としての立場を確保しようとするのであれば、これは二兎を追って、二兎を失うの図に他ならない。その程度のことも理解できていないとすれば、日本国の首相としては不適格である。この度の米・英ジャーナリズムからの批判はそういう意味なのである。
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