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2013-04-26 11:30
「鉄の女」の死去
船田 元
元経済企画庁長官
去る4月8日、英国の元首相・マーガレット・サッチャー女史が、87歳の天寿を全うされた。1979年から90年までの11年間、多くの実績を挙げて、私たちの記憶に鮮明に残る政治家となった。
サッチャー首相は決して家柄が良い家庭の出身ではなかった。イングランド中部の雑貨屋の娘として育ったが、長じてオックスフォード大学を卒業するなど、若くして頭角をあらわした。卒業後は政治家を目指し、下院議員、保守党党首、そして1979年には女性初の英国首相に登り詰めた。あの厳格な伝統を重んじる英国で、女性首相が誕生するなどは、誰も予想しなかったが、エリザベス女王の存在が背景にあったのかもしれない。
首相に就任した年は、私の衆議院議員初当選の年でもあったので、強く印象に残っている。しかし、その後の彼女の活躍ぶりは、世界の人々に更に強い印象を与えた。その一つは、当時のイギリスを悩ませていた「英国病」を治したことだ。「揺りかごから墓場まで」という福祉政策が行きすぎ、大きな政府が経済の活力を削いでしまっていた。サッチャーは国有企業を軒並み民営化させ、競争原理を復活させた。かつての小泉首相もこれに近い政策手法を駆使したが、更に徹底したものだったようだ。雑貨屋を営んでいた父親が、自由主義経済の信奉者であったことが背景にあるという。
もうひとつの功績は、東西冷戦において、ソ連を筆頭とした東側諸国の結束を崩壊させたことである。アメリカのレーガン大統領とスクラムを組んで、微動だにしない強硬姿勢は、今も語り草になっている。今私たちは、日本国憲法の検証作業を続けているが、総理大臣のリーダーシップを強化させるには、どのような仕組みが望ましいかと、議論中である。しかし、サッチャーの生き方を回想すると、仕組みではなく、その人の力量に負うところ大であると、思うようになった。あらためて、偉大な政治家・マーガレット・サッチャー女史のご冥福を祈りたい。
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