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2013-03-30 16:35

朝鮮半島有事を想定し、その具体的対策を急ぎ策定せよ

佐藤 敏光  団体職員
 朝鮮半島有事の蓋然性が高まっている。朝鮮中央通信によれば、北朝鮮は本日(3月30日)、「北南関係は戦時状況に入った」とする特別声明を発表したとされる。もっとも北朝鮮は、以前からも「開戦」を示唆する同種多様な表現を用いて、恫喝・威嚇を繰り返し行っており、今回のそれも国連による経済制裁強化決議や米韓合同軍事演習(キー・リゾルブ)への一時的な抵抗だと思われている節がある。

 しかし、昨今における弾道ミサイル発射実験や核実験の成功を経た今、同声明の信憑性は以前と比較してきわめて高いと考えるべきであろう。実際、通常兵器・兵力を用いた北朝鮮軍による韓国国境付近での活動は、著しく活発化している。安倍政権には、朝鮮半島有事を想定し、考えうる様々な課題への対応を急ぐよう、求めたい。

 課題は多岐にわたるが、中でも優先すべきものとして、まずは韓国在住の邦人保護・救出計画の詳細かつ具体的な策定を求めたい。同計画に係わる現地大使館や関連機関との連絡・調整網といった体制整備についても同時並行して行う必要がある。また、日本の海上安保体制については、現在、特に尖閣諸島域に集中しているが、部隊や兵器の機動性・柔軟性を考慮しつつ、その防衛網を日本海側全体に広げるべきであろう。万が一、有事が日本本土に拡大した場合は、市民防衛体制の整備も不可欠である。日本有事の可能性は低いが、最悪のケースを想定した危機管理体制のあり方が望まれる。

 一方、日米作戦統帥権の所在の明確化も喫緊の課題であろう。作戦統帥権とは、作戦を遂行する際の命令・指揮権である。韓国では、平時および戦時における米韓作戦計画統帥権が明確に分けられているが、私が知る限り、現下の日米同盟では統帥権の所在は明確化されていない。これは問題である。なぜなら日本国内の市民防衛はもとより、韓国在住の邦人保護や救出への対策等がいかに具体的に策定されようと、明確でかつ統一された命令・指揮系統がなければ、それらを効果的にまた迅速に実施することは難しいからである。統帥権の所在については、わが国と米国との間でも長い議論の蓄積があることは確かだが、安倍政権には是非この課題に取り組んでもらいたい。
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