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2006-11-22 21:39
ハノイでのAPECサミットが終わってー問われる日本の構想力
トラン・ヴァン・トゥ
早稲田大学教授
ハノイで開催されたAPEC首脳会議が11月19日に閉幕した。今回の首脳会議の結果として最も特徴的なのは、APEC全域に自由貿易協定(FTA)の締結を呼びかけたブッシュ米大統領の提案だと思う。自国を排除する可能性を示唆する最近の東アジア共同体の動きを懸念する米国の戦略的対応であろうが、この提案はAPECに久しぶりに新風を吹かせたと言えよう。というのも、アジア通貨危機(1997)とその影響による東アジア経済の停滞(1998-99年)、限定的地域主義(2000年前後以降の二国間・多国間FTA)の強まり、APECの機能と存在感の急速な低下の中で、アメリカの提案に新鮮さが出たからである。
考えてみれば、APEC は元々日本の構想でできたといえる。1989年にキャンベラで発足したが、APECの理論的・組織的基礎の長い準備過程における日本の学者や政治家の先駆的貢献は大きかった。しかし、APECの活動を前進させたきっかけを作ったのは、アメリカであった。閣僚会議のAPECを首脳会議に昇格させたのは、1993年の会議を主催したアメリカであった。首脳会議という強いリーダーシップの下で翌年にボゴール宣言ができて、APECの具体的目標を設定できたのである。
一方、東アジア共同体の構築に向かう中国の戦略も、日本より敏速で、明快である。FTAに関する動きは代表例である。ASEANとのFTAは中国が先行で、戦略性が強くて明快である。今後新たな動きを見せるかもしれない。さて、今後のアジア太平洋地域や東アジアの安定的・持続的発展のために何が問題であるか。斬新な問題の発見と政策構想力の提案が日本に問われていると思う。
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