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2012-10-22 10:25
日中両国政府が本当に守るべき最優先課題はなにか
若林 洋介
学習塾経営
中国は現在日本の最大の貿易相手国である。ということは、日中間の貿易によって、幾万・幾百万に及ぶ両国民の国民生活が支えられていることを意味する。このような日中両国関係の発展をもたらしたものは何であろうか。それは、1972年の日中共同宣言であり、1978年の日中平和友好条約である。特に日中平和友好条約には「武力による紛争の解決はしない」と明文化されている。日中両国はこの条約を厳守することを義務づけられている。
しかし、新聞・テレビなどの報道によれば、長年中国と良好関係にあったパナソニックなどの日系企業がデモ隊によって襲撃されている。これらの日系企業で働いているのは何も日本人だけではなく、その従業員の多くは現地中国人であり、中国全土では一千万人にも及ぶといわれる。一千万人の雇用があるとすれば、家族も含めれば、その収入で生活を支えている人口は、その2倍、3倍になるかもしれない。だとすれば、日中の広範な経済交流活動によって生活を支えられている人々の立場からすれば、自分たちの日々の生活を守ることこそが、いちばん大事な問題なのだということにならないか。また、そのような幾千万の日中両国民の日々の生活を守ることこそが、日中両国の政府の役割であり、日中両国の政治家の役割ではないのか。
周恩来首相や田中角栄首相らが、日中両国間にわだかまる歴史的課題を解消し、ギリギリの妥協で成立したのが1972年の日中共同宣言である。また、1978年の日中平和友好条約においても、園田外相と鄧小平副首相との間では、「尖閣棚上げ論」がギリギリの妥協ラインであった。これらの日中両国の優れた政治家たちの尽力によって、平和友好条約締結以来30余年にわたる両国関係の発展があったのではないのか。その後の日中両国の国民経済における相互依存関係の発展振りを見ても、これらの政治家達の先見の明というものがわかるというものだ。
日中平和友好条約は、その第1条第2項において「両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する」と“日中不戦の誓い”をしている。そしてこれこそが、日中両国民の依って立つべき原点なのである。この“日中不戦の誓い”こそが、今日の日中両国民、幾千万の人々の日々の生活のゆるぎなき土台なのである。この土台をゆるがすような方策は、同時に日中両国の幾千万の国民からかれらの日々の生活の糧を奪い去ることを意味している。2010年の尖閣諸島・漁船領海侵犯問題が起きた時、日中両国においては、観光客数が激減し、観光地・ホテル関係業界は少なからぬ打撃を被った。日中両国政府が本当に守るべき最優先課題は、日中両国民の日々の生活である。これらの両国民の日々の生活を犠牲にしてまでも、「領土問題」の決着を図ろうとすることは、本末転倒であると言わなくてはならない。
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