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2012-09-03 20:47
自力防衛論には無理がある
角田 勝彦
団体役員
最近、領土問題をめぐり勇ましい議論がよく聞かれる。たとえば大阪維新の会は「維新八策」の最終版で、安全保障分野では「日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備」と明記した。本欄でも政府、とくに外務省の「弱腰外交」を批判する論が多い。しかし、外交や国防には相手がある。さらに国の存亡すら懸かる大事である。「友愛外交」は幻想だったが「自力防衛」も幻想であろう。正解は、あるとしたら、戦後日本が日米同盟と憲法第9条の下の軽武装でたどってきた、両極端の議論の中間の険しい小径にある。
8月31日、地域政党・大阪維新の会(代表・橋下徹大阪市長)は、次期衆院選の公約「維新八策」の最終版をまとめた。9月8日開かれる全地方議員出席の全体会議で最終決定されるが、安全保障分野では「日本の主権と領土を自力で守る防衛力と政策の整備」と明記している。「日米同盟を基軸とし、自由と民主主義を守る国々との連携を強化」とも「世界の平和と繁栄に貢献する外交政策」とも記しているが、「憲法改正の発議要件を3分の2から2分の1に緩和」と明記し、「決定でき、責任を負う民主主義」を目指す国家像としていることから、憲法改正を含む自力防衛が本旨であろう。
この関連で、本欄で関心を呼んだ「軍事力の後ろ盾なき領土交渉には限界がある」との論には、どちらが実効支配しているかにより、問題が違ってくることを指摘したい。わが国が実効支配している尖閣諸島については、漁船などの侵犯を防ぐ諸措置(最終的には自衛の軍事力行使?)が必要であろうが、北方領土及び竹島については、いかなる軍事力が意味を持ち得るだろうか。そもそも領土奪還のための軍事力行使は、わが国の選択肢のなかにありえるのだろうか。詳述は避けるが、国連憲章第2条第4項等から国際紛争の平和的解決は国際法上の義務である。正戦論は否定された。国際連盟規約、不戦条約、国連憲章などから、個別及び集団的自衛ならびに集団安全保障体制の発動を除いては、武力行使は認められない。
当座重要なのは、尖閣諸島の防衛である。中国の軍事力増強と南・東シナ海における行動などを見るにつけ、関係国、とくに米国との連携が不可欠である。米政府は、最近も香港の活動家が尖閣諸島に上陸した問題に関連し、尖閣諸島には日米安全保障条約が適用されるとの立場を示した。なお、米国は広く各国との連携を求めており、オバマ米政権は「アジア太平洋回帰」の戦略方針を掲げている。クリントン長官は、太平洋が「戦略的、経済的に極めて重要」と強調し、8月下旬の太平洋諸島フォーラム(PIF)に初めて参加した。31日の演説では、各種援助に加え、違法漁船の監視活動に対する米海軍の協力も発表した、8月21日には陸上自衛隊は、島嶼防衛能力を向上させるため、西太平洋にある米領のグアム島や北マリアナ諸島のテニアン島などの離島を使用する、初めての日米共同訓練を開始したが、自力防衛を強調するより、このような連携を強化していくことが望ましい。中国も米国との対立は回避する姿勢にある。これに乗じない手はない。
最後に、最近、一部の関係論調において、個人攻撃と品位に欠ける表現が見られたことを遺憾に思う。「百花斉放」欄の名誉のために、投稿諸子の自制と良識を期待したい。
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