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2012-08-26 16:04
武力の背景なしに竹島と北方領土を取り返す意思と能力
松井 啓
元駐カザフスタン大使
8月22日の拙稿「竹島問題への取り組みは、時節の到来を待て」について、24日丸山大輔氏から「日本政府、そして外務省は、領土問題に対してこれまでどれほど本気で動いてきたのか、国民に見えていないのではないでしょうか?『時節の到来を待て』という方針により、実質的には領土問題の解決を放棄してきたのではないでしょうか?」との質問が提起されました。私の真意が誤解されている恐れがありますので、再度私の主張の要点を述べます。
韓国では、李大統領の支持率が急速に低下し、その起死回生を狙っての無責任な言動が繰り返され、その中での今回の大統領の竹島訪問であってみれば、日本は現段階では問題の解決をあせるべきではなく、大統領選挙が済んで新政権が落ち着くまでは、冷静かつ毅然とした態度を取りつつ、次のような大局的観点からあらゆるチャネル、パイプを通じて韓国国民に日韓関係の重要性を認識させ、将来の交渉の下地を作っておくべきであると考えます。
第一に、日本と韓国は、ともに米国の同盟国であり、自由、民主主義、市場経済という価値観を共有する一種の運命共同体である。第二に、両国はアジアで、資源、エネルギー、食糧、防災、安全航行、気候情報、経済協力などの分野で利益を共有している。第三に、東南アジア諸国は中国の台頭を懸念し、この海域を平和、安全、協力の海とすることを望んでおり、その中で日本と韓国が反目しあうことを決して望んではいない。第四に、「経済大国」となった韓国は、「国際社会の責任ある一員」としての自覚と行動を求められている。
領土問題は日本だけが抱える特殊な問題ではなく、東南アジア、西アジア、中近東、アフリカ等の諸国の間にもくすぶり続けています。現在は落ち着いているように見えるヨーロッパでも、潜在的な領土要求の面積を合計すると、ヨーロッパ全体の面積の3割になると言われています。国際社会では友愛の精神は通用しません。相手の弱みにつけ込むのは国際政治の常套手段で、これをけしからんということはできません。中国もロシアも韓国も対日政策でこれを見習っているわけです。また、武力で取られた領土は武力で取り返すのが今までの国際政治の常識でした。武力の背景なしに竹島と北方領土を取り返す意思と能力があるかが日本に課せられた問題です。結局、領土問題は二国間で解決する気概がなければ解決しません。また、他の拙稿でも記しましたように、日本が中近東やアフリカの領土問題に無関心であるように、直接利害を有しない第三国の諸国は、極東での日本の領土紛争に関与することは回避するでしょう。最も関心のあるべきはずの米国さえもが、大統領選挙を控えて、及び腰です。更に、通常数年かかる国際司法裁判所の判決は、強制力がないことにも留意しておく必要があります。
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