2012年の初め頃、“The New York Times” などの英米メディアにおいて、「日本のバブル経済崩壊後の『失われた10年』は神話なのではないか」、「日本は本当に言われているほどひどく衰退しているのだろうか」という議論が少なからず見られた。「神話」とは、「絶対の真理と思われてきたが、実は根拠のない話」という意味である。欧州危機のなかで円高が昂進している。「神話なのか、どうか」について、改めて考察する必要はあるのかもしれない。そもそも、欧米メディアは、なぜ「日本衰退論は神話ではないのか?」と設問するのであろうか。その背景を考えると、やはり、2008年のリーマン・ショックに端を発した世界同時不況、さらにはそれに追い打ちをかけた欧州危機があると思う。日本経済が、バブル崩壊後、10年にわたり経済停滞を続けていることは事実であるが、それにしても、欧米経済よりはましなのではないか、との見方があることだと思う。