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2012-02-16 11:11
「大阪維新の会」などはあだ花
角田 勝彦
団体役員
2月中旬の各紙全国世論調査で、民主党と自民党以外の、新政党を中心にした政権への期待が予想以上に高いことに驚いた。20年続いた経済沈滞に加え大災害再発の虞にも脅かされて、国民は先行き不安から気が短くなり、適当な指導者を据えれば諸懸案の一挙解決が可能との幻想にとらわれてきたようである。一方、メッキが剥げた民主党に代わらんとの新党の動き(とくに橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」や石原慎太郎東京都知事が絡まる新党)が活発化している。プラトンが「国家」で喝破したように、僣主制はまさにこのような民主制から発生する。しかし、そもそも原因となっている先行き不安の多くは、間違った事実認識から生まれている。歴史的、多面的、客観的見地から現在と将来の日本と世界を眺めれば、お先真っ暗な悲観主義に陥る必要はない。またマックス・ウェーバーが説いたように「政治とは、(情熱と判断力の二つを駆使しながら)堅い板にじわっじわっと穴をくり抜いていく作業」である。諸懸案の一挙解決など望むべきでない。
新党側もメッキは薄い。大阪維新の会により2月14日に発表された維新版「船中八策」(全91項目の公約のたたき台)の杜撰さを見ても、国民の新体制への期待がこのまま続くとは思われない。結局、苦い経験を経て、賢明な日本国民は実現しそうもない革命的変革を夢見るのでなく、現実を徐々に改善していくほか無いことを悟るだろう。2月10~12日に実施された読売全国世論調査によると、支持政党のない無党派層は54%へと大幅に上昇し、望ましい政権の枠組みでは、「政界再編による新しい枠組み」が53%を占めた。民主党支持率は2009年9月の政権交代以降で最低の16%に急落し自民も17%と横ばいで、望ましい枠組みで「自民中心」は9%、「民主中心」は5%に過ぎなかった。「民主と自民の大連立」も23%だった。同じ頃の朝日全国定例世論調査でも「民主党と自民党以外の政党を中心にした政権に代わるのがよい」が29%に上った。次の衆院選で、大阪維新の会が「国会で影響力を持つような議席を取ってほしい」という人は54%を占めた。
なお12日、大阪維新の会が明らかにしたところによると、次期衆院選の候補者養成をめざす「維新政治塾」の応募者は3326人に達した。現在のような大変革の時代、混迷の時代において、悲観論は横行しやすい。身辺を見回せば、長い不況から始まって治安、自然災害、放射能、国際危機と、不安を感じる現象は数限りない。今だけではない。文藝春秋3月号が再録した同誌1975年2月号掲載の論文『日本の自殺』もローマ帝国滅亡との比較において、このような日本の没落の危険を訴えている。国民は一挙解決の夢を追いたくなる。それを実現する英明な指導者の誕生に期待したくなる。多くが、現在と将来の日本と世界をどう見るかにかかっている。歴史的、多面的、客観的見地から、現在の大変革をどうとらえるかである。我々は混迷の漂流に抗する確固たる碇を必要としている。
私は、本欄への諸投稿(例えば2006年10月16日投稿の「近未来を考える(ニュールネサンスからメタモダンへ)」)において、現在が超現代へ向かう新しいルネサンスの時期であり、必ずしも将来を悲観的に見る必要はないことを主張した。それどころか日本は、かつてのルネサンスにおけるフィレンツェのような位置を享受する可能性が高いと主張した。詳述は避けるが、世の関心が強い資本主義経済の混乱についても、かつて中世の荘園制経済がルネサンスの都市の発展などで崩れていった経緯を想起させるものがあり、私は次に崩壊でなく知本主義経済が来るとみている。このニュールネサンス論はさておき、橋下市長が、次期衆院選での他党との連携について、14日夜、「船中八策」に賛同するかどうかを条件にする考えを示したのに対し、中央政界の反応は概ね否定的である。民主党の一川保夫参院幹事長は記者会見で、参院の廃止や首相公選制など憲法改正が必要な政策について「現実性のない話」と指摘した。自民党の脇雅史参院国対委員長も「とても選挙公約にならない。論評に値しない」と批判した。年金の掛け捨て制度など、有権者からの反発が避けられない政策もある。幸いにも、全ては来るべき衆院選のあだ花に終わる公算が大きいのだろう。
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