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2012-01-25 09:55
教員の切磋琢磨なき東大の内部改革は困難
大藏 雄之助
杉並区教育委員長
今回の東京大学の秋入学発案には地盤沈下の危惧も作用しているらしい。ロンドン・タイムズの順位付けによれば、東大は世界で30位に位置するという。これは主として各大学の論文が引用された数を基本にしているのであって、別に気にする必要はない。まず、論文の引用は理系に偏っている。日本の大学でも理科系の論文の多くは英語で発表されている上に、数式や記号が主体になっていれば理解しやすいから、外国の研究者の目に触れる機会が少なくない。
一方で、日本の経済学者や国際政治学者でも英語で論文を発表する例は限られているし、その表現そのものが魅力的でなければ引用の対象になることはあまりない。だから。一橋大学のような文系だけの研究機関は世界のランキングの上位に登場することは絶対にない。さらに、日本語や日本文学、日本史、ないしは日本の伝統芸能などに関する論文の引用はきわめてまれである。東大を初めとする日本の総合大学のランクが低いのは当然である。
だが、では東大がトップグループに移行するかといえば、そうはいかない。やはり30位ぐらいが相当ではないだろうか。それは、入学は難しいが卒業は易しく就職にも恵まれているという制度のために学生が真剣に勉強しないこと、教授陣が研究の美名に隠れて学生の教育の手を抜いていること、「一流の」大学は教授陣を自校の出身者で固める傾向があること、などによる。
3番目の問題をもう少し詳しく見てみよう。東大では、18歳で入学してからそのまま大学に残り、定年までの40数年間、東大だけに在籍する人がかなりいる。最近は外部から採用される者もふえているが、多くの場合同質の学者が集められている。アメリカでは学士・修士・博士の学位を同一の大学で取得したときは評価されない。また、ハーヴァード大学は卒業後少なくとも1度他の大学で教員をして実績を認められなければ自校に迎え入れないのを慣例としている。教員どうしの切磋琢磨がなく、安易にタレント同様に政府の審議委員などに任命されて甘やかされていては、東大の内部改革は困難である。
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