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2011-11-20 09:32

イタリアの春

川上 高司  拓殖大学教授
 イタリアのベルルスコーニ首相が、17年間の統治の後ようやく辞任した。どんなにスキャンダルまみれでも決して辞任をせず権力の座にしがみついていたベルルスコーニ首相だったが、ギリシャ危機に連なるイタリア国債暴落によってユーロのみならず世界的な経済危機を招きかねない状況に対応できず、ドイツ、フランスの首脳らの圧力もあってとうとう舞台から去った。本人は無念であっただろうが世界は当面の危機が回避されたと歓迎しており、イタリア国民だけでなく世界が彼の辞任を喜んだという事実は重い。
 
 だが喜んでばかりもいられない。イタリアの危機はユーロの危機でありユーロの危機は世界の危機である。イタリアに世界の命運がかかっていると言っても過言ではない今のこの厳しい状況を乗り切るには、次期首相は相応の逸材で同時に責任に耐えうるだけのタフさが必要であろう。次期首相として指名されたのは元欧州委員で経済学者のマリオ・モンティ氏。リベラルで豪腕であるとの評価が高いモンティ氏は組閣と国内の財政改革という難題に取り組まねばならない。

 モンティ氏はテクノクラートを中心とする「知的集団」政権を打ち立てて挑むのではないかと見られている。ECB銀行総裁のマリオ・ドラギ氏もイタリア出身のシビアなエコノミストであり、イタリアの待った無しの財政改革こそが、ユーロの存亡を左右するとあって2人のマリオに期待がかかっている。
 
 この欧州のジェットコースターから降りようとしているかのように、アメリカはハワイでAPECの会議を主催し、アジアの成長を取り込んで自国の経済を浮上させる、そんな思惑が読み取れる。国内経済がなかなか上向かないことを苦慮するオバマ大統領としては、再選への鍵となる経済問題で成果をあげるべく強権経済外交を展開するかもしれない。なにしろ彼はシビアな現実主義者なのである。絵に描いた餅は要らないのだ。
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