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2011-01-27 01:52
主観的だった各国メディアのモスクワ空港テロ事件報道ぶり
菊池 由希子
大学院生
モスクワ郊外のドモジェドヴォ空港で、現地時間1月24日16時32分に爆発がおきた。私は事件後すぐにテレビ局でのテロ報道のための通訳としてかりだされていた。テレビ局では、ロシアの国営放送を見て通訳していた。ロシアの国営放送では、「犯人と思われる男性の頭部はアラブ系の顔に似ている」ということが何度も繰り返されていた。通訳として、そのことを訳していたのだが、日本語でのニュースでは使われず、「北コーカサスのイスラム過激派による犯行ではないか」との報道を、どの日本のメディアも盛んに流していた。日本だけでなく、世界的に「北コーカサス武装勢力の仕業ではないか」との報道が先走っていたが、アラブ系と北コーカサス系をロシア当局が間違うとは信じがたい。そして、一社だけ、ロシアの報道機関が入手したという犯人の頭部の写真を公開した。本物であるかどうかについては、誰も調べようがないが、写真はこれ(http://www.lifenews.ru/news/49363)である。
北コーカサスの武装勢力側のサイトであるカフカス・センターでは、今回のテロについてロイター通信が「カフカス・センターが自爆テロを称賛している」と配信し、それを日本語でも拡散されたことについて、「事実無根である」として遺憾の意を表明し、ロイター通信に抗議している。また、カフカス・センターは「空港に犯人はいなかったのではないか」という説も主張している。事件そのものがロシア当局の「自作自演」である可能性があるとの説である。
メドヴェージェフ大統領は、25日午後、「テロを防止、撲滅するため、今後はアメリカやイスラエルのような完全な検査を行っていく」と発表した。今後は、国際テロ対策という大義名分のもとに、どんどん一般市民を統制していくことになるのだろう。今回のモスクワの国際空港における外国人を含む民間人にたいする無差別テロで、一番得をしているのは、一体誰なのか。
プーチン首相は、26日に「今回のテロ事件は、チェチェンとは一切関係がない」と公言した。日本や外国のメディアが、ロシアのメディア以上に「北コーカサスのイスラム過激派武装勢力による自爆テロだ」という先走った情報を世界中にばらまいているのを見ると、ロシアのニュースの信ぴょう性を疑う各国メディアではあるが、今回のテロ事件の報道の仕方に関するかぎり、各国メディアのほうがより主観的で、信ぴょう性のない報道をしていたといえよう。
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