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2006-07-26 17:06
領海問題でもあり、資源問題でもある
岩井孝司
大学院生
第28政策提言「変容するアジアの中での対中関係」第 3回政策委員会メモの中で、東シナ海のガス田問題について、「この問題は領海問題なのか、資源問題なのかきちんと整理する必要がある」との政策委員の発言が紹介されているが、これについて私見を述べたいと思う。
この問題が領海問題か、資源問題かなどと問うのは日本人の安全保障に対する意識を顕著に表しているように思う。問題がどのカテゴリーに属するかを整理することで対処法は明確になるかもしれないが、一方で領海問題なら外務省、資源問題なら経産省といった具合に分担作業になりかねない。これは領海問題でもあり、資源問題でもあり、ひいては安全保障問題なのだ。
かつて、アジア極東経済委員会(ECAFE)が試算したこの海域の埋蔵量 (石油換算で1000億バレル)とは異なり、現在見込まれる埋蔵量は3690万バレル程度だという。日本の石油消費量だと1か月分くらいに過ぎない。ならば、中国にとっても激増の一途をたどるエネルギー需要をまかないうるはずがないのだが、独自開発を譲らず、日本側水域での調査さえ認めないという態度は、なぜか。開発コストを考慮すれば、日本との共同開発は中国側にとっても必ずしも悪い話ではないはずだ。
独自開発にこだわる理由は、エネルギー独占だけではなく、この海域での調査が中国の海洋安全保障戦略の一環であるからだ。第一列島線上にある国防上のバイタル・エリアであり、台湾有事の際、潜水艦が太平洋で活動するための出口がこの海域である。つまり、中国はエネルギー、領有権、安全保障などを個別に考えるのではなく、一つのコングロマリットとして臨んでいるのだ。
日本にとってもシーレーン防衛上重要であり、排他的経済水域(EEZ) 未確定地域であることを考えれば、領有権主張のためにも明確な姿勢を示す必要がある海域である。領海問題か資源問題かなどと定義づけをする以前に、複数の省庁だけでなく官民一体となって取り掛からなければ手遅れとなってしまうかもしれない。日本の選択肢はもはや単独調査を開始する以外ない。次回の政策委員会においては、エネルギー、軍事、領土問題など多角的な角度から、しかし総合的な議論をすることを期待したい。
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