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2006-07-14 17:42
小泉首相の「平和と繁栄の回廊」創設構想は中東和平に貢献しない
吉川 潤一
学生
7月12日に小泉首相はイスラエルを訪問し、日本・イスラエル・パレスチナ・ヨルダンの4者協議の設置や域内での持続的な経済支援を柱とした「平和と繁栄の回廊」創設構想を提案しました。小泉首相の提案は、紛争を悪化させ、さらにパレスチナとアラブ近隣諸国における日本の信用を落とす結果になる、と私は思います。以下にその理由を述べます。
まず、日本・イスラエル・パレスチナ・ヨルダンの4者協議の設置ですが、ヨルダンとパレスチナ双方がヨルダン・パレスチナ連邦国家案に反対している以上、ヨルダンがイスラエルとパレスチナの信頼醸成と和平交渉に貢献できることはほとんどありません。さらに、パレスチナ人は1977年に起こったブラック・セプテンバー事件以来、ヨルダンに対して深い不信感を抱いておりまず。4者協議は、問題を複雑化させるだけで、問題の解決には寄与しません。
つぎに、イスラエルが占領し、入植地と軍事基地を保持しているヨルダン渓谷に対して経済支援を行うことは、イスラエルの占領と入植地拡大を正当化することと等しく、日本はパレスチナとアラブ諸国での信頼を失うことになります。パレスチナ経済停滞の原因は、検問所と分離壁によって移動が制限され、イスラエルがパレスチナ商品に高関税をかけ、さらに代理徴収した関税を自治政府に返却しないことにあるのです。また、持続可能な経済発展のためには、イスラエルがパレスチナ人に移動の自由を与える必要がありますが、パレスチナ・ゲリラの侵入を警戒するイスラエルはそれを認めない可能性が高く、そうなればイスラエルとパレスチナの不信感と対立意識は深まります。もしヨルダン渓谷で、イスラエル人入植者がパレスチナ人によって殺害されれば、イスラエルの軍事行動が予想され、紛争は悪化すると思います。「平和と繁栄の回廊」どころではありません。
以上の理由から、4者協議の設置や域内での持続的な経済支援には反対です。それ以前に、イスラエルとパレスチナ双方が停戦を遵守し、国連停戦監視団の受け入れを認め、イスラエルが入植地と分離フェンスの建設を停止させる必要があります。停戦が実現し、信頼関係がある程度醸成された上で、土地の交換、分離壁のルート変更、ガザ地区と西岸地区をつなぐ回廊建設、水資源分配率の是正を基礎に置いた和平交渉が可能になります。日本は、イスラエルに対して、占領政策と分離壁建設をやめ、国連監視団を受け入れるように圧力をかけるとともに、パレスチナの経済状況をこれ以上悪化させないように、パレスチナへの経済支援を再開するように欧米諸国に働きかけていくべきです。また、パレスチナ自治政府に対しては透明性の確保と腐敗の根絶を要求していくべきです。和平交渉開始後は、交渉の進展具合に合わせて、イスラエルとパレスチナへ経済支援を行い、和平こそが両者に利益をもたらすというメッセージを送り続けるべきです。それが、日本にできる最大限のことだと私は考えます。
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