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2006-07-07 11:15
中国問題を論ずる際にその中で台湾問題の存在を忘れるな
松岡 真二
大学院生
第28政策提言「変容するアジアの中での対中関係」を議論した3つ(第1回~第3回)の政策委員会の「メモ」を拝見したが。気になることがある。それは台湾問題が取り上げられた形跡がほとんどないことだ。このことは、貴政策委員会だけでなく、一般世論が中国問題を取り上げるときも、おおよそ同じ傾向にある。これは「台湾は中国の一部ではない」という前提で議論しているからだろうか。そうではあるまい。台湾が中国の一部であろうと、なかろうと、台湾問題は中国を議論する際に避けて通ることの出来ない問題ではないだろうか。台湾問題をそれ自体として取り上げる必要性のあることは言うまでもないが、それだけでなく、中国問題を論ずる際にその文脈のなかにおいて論ずることも重要ではないだろうか。その理由を次に述べたい。
これまで台湾海峡の軍事力バランスは台湾側に有利であると言われてきた。少なくとも米台を合わせた海空軍力は中国のそれを上回り、台湾海峡の制海権、制空権は米台側にあるとされてきた。しかし、米国防総省の2006年度版『中国の軍事力に関する年次報告書』によれば、台湾対岸の中国領における短距離弾道ミサイルの配備は毎年着実に増強されつつあり、昨今は710-790基に達したと言われる。いざ有事となったときのその軍事的な意味は無視できない。経済的、政治的なファクターも取り入れた総合的な力関係でも、中国側は優位に立ちつつある。中国の経済成長の結果、台湾経済それ自体が中国への依存度を増しつつあり、その影響は台湾内政における与野党の力関係にも及びつつある。中国の世界的な外交力を動員した国際社会における台湾の締め付けも厳しいものとなりつつある。これらを総合すれば、全体的な力関係が中国側有利に傾きつつあるなかで、台湾問題の帰趨が微妙なものとなりつつあることは、間違いない。
しかも、それは日本にとってどうでもよい問題ではない。台湾が独立を宣言した場合には、中国はそれを阻止するために武力を行使すると言っているが、では台湾が独立を宣言さえしなければ台湾海峡の平和は保障されると当然視してよいのであろうか。それほど事態は単純ではないだろう。いずれにせよ、いったん台湾有事となれば、アメリカは手をこまねいていないだろう。そうなれば軍事同盟を結ぶ日本も知らぬ顔をして通るわけにはゆかない。大きな負担が求められるだろう。台湾海峡の帰趨が日本にとってどうでもよい問題でないとは、明白である。
それではどうすればよいのか。日台関係の現状はこれでよいのか。日本として中国に対し言うべきことはないのか。米国と意思疎通を強める必要はないのか。それらの点に、第28政策提言「変容するアジアの中での対中関係」は言及すべきではないのか。それが、私の言いたいことである。
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