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2010-08-30 13:41
81歳の老人を年金不正受給だといって逮捕すべきか
大藏 雄之助
異文化研究所代表
100歳以上の高年齢者の所在が不明になっている事実が毎日報じられているが、中には「徳川14代将軍イエシゲの時代に生まれた人」などというテレビ・ニュースもあり、担当者の知識のなさ、念のために名前を確認する努力さえしないいい加減さもうかがわれる。死亡した高齢者の家族の中には、年金受給資格喪失の届出をしないで、あるいは問い合わせに対して虚偽の回答をして、引き続き年金を浮けとっていた例が少なくないらしい。
幻の高齢者が存在する理由は、戸籍と住民基本台帳と年金原簿が、縦割り行政のために照合の義務がなく、さらに家族が死亡の届けを出さないでいると、生き続けているとする、ような法的な不備があるからである。児童虐待等の疑いがあるとの具体的な通報があっても、適切な対応がとれないでいる現状では、いつの間にか消えてしまった年寄りの実情を把握するのは、ほぼ不可能であろう。
東京都内で男性最高齢とされていた人の81歳の娘と53歳の孫娘は、共済年金不正受給の詐欺罪の疑いで警視庁に逮捕され、すでに身柄を検察庁に送られた。2人は容疑を認めているという。年金不正受給は犯罪である。報道によれば、2人は長年にわたって偽装工作を行った。確かに悪質である。しかしながら、私は、この81歳の歩行困難と伝えられる女性の拘束には、強い違和感を抱かざるを得ない。
そもそも刑事事件の容疑者を留置するのは、犯行が凶悪であり、その行為を継続ないしは反復する可能性が大であり、また逃亡、証拠湮滅等を図る恐れがある場合であろう。今回の事件では、81歳の容疑者はそのいずれにも該当しない。在宅起訴で十分であり、有罪となっても執行猶予となるのではないか。生活の苦しい遺族が、年間にすれば大した金額でもない年金の振り込みを受け、しかもその大部分を「老後」のために蓄えていたのである。そのような不正ができた仕組みをこそ憎むべきだ。
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