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2010-08-23 14:08
米議会「普天間」で対日不信増幅
鍋嶋 敬三
評論家
沖縄の米海兵隊普天間飛行場の移設問題は5月の日米共同声明で「いかなる場合でも8月末までに」検討を完了すると明記した。その期限が迫る中、菅直人内閣はまたも代替施設の場所や工法についての結論をあいまいなまま先送りしようとしている。鳩山由紀夫前首相の辞任の引き金になった「5月末」からわずか3ヶ月後に「再び」である。民主党政権に対するいら立ちが米議会で噴出してきたことを直視しなければならない。7月下旬開かれた下院軍事委員会の公聴会は対日批判を正面からぶつける場となった。
公聴会の主題は普天間飛行場の移設と海兵隊8000人のグアムへの移駐だが、在日米軍とその再編が米国のアジア太平洋軍事戦略に直結していることが背景にある。スケルトン委員長(民主党)はアジア太平洋地域が21世紀において米国の国益にとってますます中心的な関心事になり、沖縄米軍が東アジアでの軍事力投射能力の中心になることを強調した。国内総生産(GDP)の1%弱しか防衛費を支出しない日本が日米同盟によって多大な恩恵を受けている以上、日米地位協定の大幅な変更は必要ないと断言した。参院選の公約に同協定改定の提起を掲げた菅政権の要求をはねつけたのである。
共和党の筆頭理事であるマッキオン議員はこの時期の公聴会開催について、北朝鮮の武力による威嚇(韓国艦撃沈事件)と同列に扱う形で、普天間飛行場の移設先をめぐる日本政府のあいまいな態度を指摘し、「非常にいいタイミング」と皮肉った。鳩山氏が決定をずるずると遅らせた挙げ句、首相辞任に追い込まれたのに続いて、「今度は新しい(菅)首相が同じように先延ばししようとしている」と批判した。菅首相は9月の民主党代表選、名護市議選、11月の沖縄県知事選をにらみ、先送りでしのごうとする姿勢が濃厚だ。11月のオバマ大統領訪日までに早期に政治決着を図りたい米側とのギャップは広がるばかりである。民主党への政権交代以降、日米同盟の信頼関係は大きく傷付いたが、菅首相に立て直しのため指導力を発揮する強い意思が見えないのはどういうことか。
次々に首相が代わる日本の防衛政策の継続性に疑問の声も出された。対日政策の責任者であるキャンベル国務次官補は「立て続けに首相や閣僚が代わると、関係や信任の確立が非常に難しくなる。(交渉相手の)人物とか組織がしっかりしているのか懸念が生じる」と認めざるを得なかった。自民党政権当時から長年にわたり在日米軍問題にかかわってきた知日派の同氏も、誰が責任を取るのかもはっきりしない民主党政権の迷走ぶりに不信感を強めていることがうかがわれる。日米安保条約改定50周年を機にうたう「同盟深化」には、ほど遠いのが日米関係の現状ではないか。
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