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2010-04-23 07:30
高速料金値上げ問題での迷走の背後に小沢・前原の暗闘
杉浦 正章
政治評論家
高速料金をめぐる迷走の原因を、小沢の選挙至上主義と鳩山のリーダーシップ欠如とするのはもっともだが、筆者はこれに加えて普天間政局と「政治とカネ」をめぐる暗闘が背後にあると感ずる。簡単に言えば、首相・鳩山由紀夫は小沢を怒らせて、普天間で「鳩山切り」に遭いたくない。幹事長・小沢一郎は「政治とカネ」で、ことあるごとに責任論を称える国交相・前原誠司の首をすげ替えたい。新聞も、テレビも、このどろどろした暗闘を見逃している。簡単に複雑な事態の謎解きをしよう。まさに小沢のやり口は、忠臣蔵の吉良上野介が赤穂藩藩主・浅野内匠頭をいじめるの構図だ。前原内匠頭は、危うく切腹するところだった。前原も、これだけコケにされては怒るだろう。そもそも発端は、小沢が昨年10月に官邸に乗り込んで、選挙目当てで「コンクリートから人へ」を180度転換させて、高速道路建設推進を唱えたことにある。
前原は、拒絶すべきところを、鳩山が了承してしまったため、泣く、泣く、高速割引に使うための財源2・5兆のうち1・4兆を高速建設に回して、事実上8割が値上げとなるように方針転換した。ところが小沢は、こんどは「値上げは駄目」と言いだし、小沢の番頭と化している鳩山が、「へいへい」とこれに従った。ここで前原の堪忍袋の緒が切れたのである。松の廊下を省略して、一挙に辞任で切腹しようとしたのだ。やっとことの重大さに気づいた鳩山が、例によって音より早く方針転換。「値上げ案」を了承したのだ。おまけに「一度決めたら絶対変えないという姿勢が、旧政権の硬直した政治を招いた」と、自らの「愚かさ」を棚に上げて、あらぬ方向を非難した。ところがこれで終わらない。またまた転換して、最終的に「国会の審議を見て決める」とした。自分で処理できないから、国会に丸投げしたわけだ。
国会の審議とは、絶対多数の民主党の方針に従うことで、前原を外したことになる。しかし時間差があるから、前原も切腹しなくて済むことになり、当面は「めでたし、めでたし」。物事の急所を理解していると、これだけ分かりやすく解説できる。要するに、大局を見る眼が100%欠如している鳩山が、暫定税率、郵政民営化見直し、普天間移設に次いで、決定的な暗愚さを露呈させたということだ。「暗愚帝王」と批判された鈴木善幸などの比ではない。まさに「暗愚大王」だ。鳩山の心底には、普天間5月政局をどう乗り切るかだけがある。この視点で物事を見れば間違いない。元秘書には禁固2・年執行猶予3年の有罪判決が下り、四面は楚歌で満ちあふれている。ここで小沢に見放されたら、退陣しかない。小沢の一挙手一投足を震えながら見つめているから、小沢が「高速無料化」と言えば、経緯など無視して「ハイ、ハイ」と従うのだ。まさに唾棄すべき政権と化した。政権の体をなしていないというべきかも知れない。
一方小沢の方も、「政治とカネ」ではことあるごとに前原が「誰もけじめをつけていない。そこに大きな問題がある」と事実上辞任要求に踏み切っていることに、業を煮やしている。煙ったくて、切りたくてしょうがないのだ。もともと前原は金権政治打破を唱え、田中派の金権政治を継ぐ小沢的体質とは全く相いれないものがある。憎くて仕方がない前原をどうするかが、これまた常に小沢の脳裏をかすめる。しかし今度は後ろから切った。担当の前原の出席していない鳩山らとの4月21日の会談で、「無料化せよ」と持ち出した。前原がうまくいけば辞任すると思ったに違いない。小沢一極主義の政権と言われて久しいが、今度の体たらくほど、「政策決定の内閣一元化」どころか、「幹事長室への一元化」を象徴した問題はない。小沢も、鳩山も、「参院選挙惨敗」への流れをひしひしと感じ、ワラをもつかみたい思いで高速無料化を推し進めようとするのだろう。しかし財源無視の民主党政治の象徴でもあり、有権者の眼は厳しい。そのことをやがて知るだろう。
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