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2010-04-20 07:43
鳩山政権、支持率20%台の蟻地獄に転落
杉浦 正章
政治評論家
内閣支持率というものは、30%になれば蟻地獄(ありじごく)の淵、20%台になればその斜面に落ちてもがく姿とみれば、まず間違いはない。政権担当以来初めての政局とあって、そのもがきっぷりが場馴れしていない。初々しいというか、稚拙というか、論理的にもあやしいのだ。これに対して、参院自民党のドン青木幹雄の持論は「内閣支持率と政党支持率の合計が50%を切ると退陣」だが、これも論理的にはあやしい。しかしこのアバウトなジンクスが最近は当たるから不思議だ。「決して投げ出さない」が漏れ来る鳩山の言葉だが、敏感に観察すると焦燥感がひしひしと伝わってくる。「メディアがいろいろ動きすぎ」とマスコミ批判に走るのも、古くは岸信介、佐藤栄作以来末期を迎えた首相の陥る発想だ。
党首討論で「腹案がある」との発言も、苦し紛れのもっともらしさを演出しただけ。日米首脳会談でたった10分の会談にすがるのも、哀れさすら感ずる惨めな姿だ。腹心の官房長官・平野博文も問題の所在がよく分かっていない。当選5回で全く政局など無縁の履歴だったから無理もないが、言うことに説得力がない。「国民の意思で政権交代させてもらった。その期待に沿うことさえ、首相が政策遂行上持ちつづけていけば、進退の問題ということは全くない」と述べたが、誰でも反論できる。首相の政策遂行能力がないから、進退にかかわってきているのである。支持率回復も「国会に提出している法案を成立させ、政策遂行につなげる」「予算が執行されれば変わってくる」と述べるが、これもはかない期待に過ぎない。子供手当のばらまきなどは「政治とカネ」と「普天間」にかき消されて、効果は極めて限定的だ。政権交代のたらい回しで、自民党が信頼を失ったことを理由に挙げても、信頼喪失は鳩山自身が作っているのだから、論理構成に無理がある。
こうした論理でなく政治優先の発言には、アバウトな政治論で反論するに限る。冒頭挙げた青木の「内閣支持率+政党支持率が50%を割れば退陣」論だ。朝日新聞の最新調査は「内閣支持率25%+政党支持率23%=48%」だから「退陣」となる。最近では森喜朗、安倍晋三、福田康夫がその範ちゅうに入る。話としては面白いが、内閣支持率が40~50%になっただけでも辞めたのが、海部俊樹、細川護煕、羽田孜、小渕恵三、小泉純一郎だから、しょせんは飲み屋の話題程度の話だ。
しかし、政権が本当に5月政局を乗り切れるどうかとなると、一つの要素は、小沢が「普天間」から遠ざかり始めていることが気になる。普天間では一切発言を避け、4月19日も「外の敵は怖くない。うちの中でゴタゴタしてはいかん」と抽象論にとどまっている。あえて火中の栗を拾わず、自らの“温存”をはかっているとしか思えない。先に「いろいろ難局もあるかもしれないが、それを乗り越えて参院選につなげていきたい」とも述べていることも考え合わせると、普天間から遠ざかり始めたことは、鳩山にも距離を置く姿に見える。まあいずれにしても、「鳩山が5月か、6月に退陣しない場合、国民感情はどうなるか」をシュミレーションしてみれば、分かることだ。国民の拒絶反応を押し切って居座った場合、国民はまさに「おんぶお化け」に取りつかれたような“鳥肌”が立つ思いに陥るだろう。この生理的嫌悪感が支持率をさらに下げる。支持率も10%台突入は間違いなく、10%を割って竹下登の4.4%と同程度になる可能性も除外できない。明らかに「参院選挙大敗での退陣」が待っている。蟻地獄の急斜面が短いか、長いか、の違いでしかないだろう。
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