ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2010-03-03 07:39
泥棒が縄をなう鳩山政権の政治資金規正法改正
杉浦 正章
政治評論家
久しぶりの首相・鳩山由紀夫と幹事長・小沢一郎の会談は、要するに“一蓮托生の頬被り”で「政治とカネ」政局を乗りきれるという判断が根底にある。強気の中央突破作戦だが、政局観、倫理観の双方において“甘さ”が目立つ。根底の“読み”が甘すぎるのである。政権は鳩山、小沢を筆頭に石川知裕、小林千代美と「進退4兄弟」を抱えて、支持率は急落傾向をたどっており、これに普天間基地移設問題と未曽有の赤字国債発行不可避の財政問題という政局直結の時限爆弾を抱えている。これらが5月には一挙に火を噴く可能性がある。選挙前に「進退4兄弟」問題に決着をつけなければ、局面転換は図れまい。政権5月危機説は依然現実味を失っていない。
かってない水膨れ予算でも、成立のめどがつくと嬉しいと見えて、鳩山と小沢がはしゃいだ。「もっと会いましょう」と鳩山が言えば、「毎日でもいいぞ」と小沢。ここで鳩山が、小沢離れのポーズを修正して、一蓮托生路線に戻ったのは、なぜか。予算成立にめどを立てたから「政治とカネ」もやり過ごせるという判断が根底にある。予算成立で支持率回復も可能という判断だ。しかし予算成立が支持率につながった例は過去にない。数を頼んで国会運営はできても、国民の不信感という心の部分に土足で踏み込んだままで、生き延びられるかということだ。現れた「小鳩戦略」は懸案先送りだ。まず小林の進退について首相、幹事長が「本人の問題」と口裏を合わせ、事実上先送りだ。おそらく政局直撃となりかねない4月下旬の補欠選挙は避けようとしているのだろう。
鳩山が小沢に促した国民への説明責任の問題もうやむやのまま先送り。鳩山を「ピヨピヨ鳩」と言うそうだが、3歩歩いて前言を忘れる習癖を、まさに言い当てている。このままでは参院選挙で過半数などとてもおぼつかないが、小沢戦略は擦り寄ってきた公明党を抱き込んで、連立を組み替えることを視野に入れはじめたようだ。政治テクニックで当面を糊塗し続けようというのが、「小鳩戦略」の基本であるように見える。両者が合意した政治資金規正法改正で、与野党協議機関の設置も、泥棒を見て縄をなうのではなく、泥棒自身が縄をなうようなものだ。方向感覚を疑う。自民党総裁・谷垣禎一が「発想が逆立ちしている」と言うのももっともだ。現行規正法も守れないで、同法を改正して、守れるのか。
自民党は国会運営の無力を悟り、国会戦術を練り直す方針のようだが、これも方向感覚がおかしい。圧倒的な数の前に蟷螂(とうろう)の斧を振りかざしても限界がある。問題は国会戦術ではなく、追及の方向性だ。その面では「政治とカネ」を粘り強く追及してゆくしか方策はない。現に野党による国会の追及と新聞の論調は、珍しく呼吸が合っている。3月3日付の朝日新聞の見出しも、鳩山と小沢が「最大の不安要因」であり、「続投に強い意欲を示すが、『同時辞任』ささやかれ」とある。小鳩の甘い政局の読みに冷水を差すものにほかならない。自民党にとってみれば、追及の長期化こそが願ってもない国会戦略なのだ。なぜなら政権の支持率低下を招いているではないか。できれば小沢に得意の「辞任カード」など切らせずに、また朝日の見出しのように「同時辞任」などさせずに、フィーバーの去った現政権のまま参院選挙に臨むのが、自民党にとって党勢回復の唯一の道と心得てもおかしくない。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:5515本
公益財団法人
日本国際フォーラム