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2010-02-23 07:42
自民の国会審議拒否は、ピント外れだ
杉浦 正章
政治評論家
自民党は、せっかくの「長崎版政治とカネ」追及のチャンスを予算委審議拒否で見送るとは、どういう判断なのだろうか。長崎知事選は、閣僚・党幹部そろって“利益誘導”発言を繰り返し、公職選挙法違反の疑いが濃厚である。二の矢、三の矢の絶好のチャンスを見逃して、穴に閉じこもる。上目づかいで世論の動向を見ているのだろうが、審議拒否が長期化すれば、世論は確実に矛先を自民党に向ける。審議拒否は両刃の剣なのだ。自民党はせっかく「政治とカネ」で盛り上がった世論に、方向違いのだめ押しをしている。それでは逆効果であることに気づくべきだ。
2月22日の役員会で自民党総裁・谷垣禎一が珍しく「予算案の審議日程を考えると、政府・与党と対決するのは、今をおいてほかにない」と“宣戦布告”の号令を掛けたが、ちょっとピントがずれているのではないか。審議拒否は世論に対するアピールの方法が限られている野党にとって、使いようによっては“伝家の宝刀”になり得る。しかし、小沢の証人喚問で審議拒否しては、絶好の好材料と“相打ち”をしてしまうことにならないか。証人喚問も、参考人招致も、主張し続けるところに意味がある側面を見逃してはならない。朝日新聞が早くも社説で「民意をはき違えている」と指摘しており、新聞論調は時がたつにつれて、谷垣の「今をおいてほかにない」という判断の誤りを気づかせる方向に向かうだろう。野党の審議拒否がマスコミに褒められた例はまずない。議会制民主主義に逆行しかねないからだ。
この場は、政調会長・石破茂の「選挙に勝った勢いで、更なる追及を続けるべきだ」という判断が正しいのではないか。政府・与党の長崎知事選における利益誘導のひどさは、眼に余るものがあった。まず幹事長・小沢一郎が先頭に立って「知事に選んでいただければ、自主財源となる交付金も皆さんの要望通りできる。高速道路をほしいということであれば、高速道路を造ることもできる」と、自ら否定してきた“コンクリート”そのものを集票の対象にした。農水相・赤松広隆は、地元の要望の強いミカン選別機への補助金について、民主党候補への投票を前提条件として、「10億円くらい補助するよう、私の責任で約束する」と述べ、国交相・前原誠司も島原の道路建設を約束した。選対委員長・石井一に至っては、支持候補を選ばなければ「民主党政権は長崎に対してそれなりの姿勢を示す」と、まさにやくざのどう喝のような発言をしている。一連の発言は公職選挙法の利害誘導罪の疑いがある。更に閣僚という公職の立場にあるものが、明らかに利益誘導をしたことは、政治的・道義的責任を問われてもおかしくない。
まさにツートップの「政治とカネ」の体質が、何のことはない閣僚にまで染み込んでおり、かっての自民党政権時代と全く違わないことを証明しているのだ。自民党政権時代でも、赤松のような露骨な利益誘導は聞いたことがない。要するに、県民の民度を低く見た“卑しい”選挙を展開したのだ。小沢の選挙神話の原点を改めてみる思いだ。この露呈した「長崎版政治とカネ」を機を見るに敏な指導者なら追及するのだが、自民党は何を間違えたか、時季外れの“春の冬眠”に入ろうとしている。忘れているのは長崎知事選勝利は、これまでの自民党の国会追及が大きく作用していることだ。せっかくのチャンスをみすみす逃すのが、自民党執行部の審議拒否だ。証人喚問も、参考人招致も、マスコミは支持しているが、審議拒否は支持しない傾向があり、これを見据えた対応をすべきだろう。野党の立場で孤立した審議拒否をするなどの対応は、早々に方針転換すべきだ。
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